2話

「──ひゃぁ……!!」


 突然、冷たい物が頬に押し付けられ、飛び跳ねるように身体を揺らしてしまいました。

 目の前には妖艶な表情を浮かべながら、手に牛乳パックを持っているめるがいました。


「まるで気持ち良さそうに寝てるから邪魔したくなっちゃった」


 どうやら私は寝てしまっていたらしいです。だって食後だし、天気良いし、しょうがないと思います。思いませんか?


「購買に行ったらひかりと会ったから連れてきたわ」


 とめるが言うと、めるの後ろからひょっこりと、短髪で丸顔のひかりちゃんが顔を覗かせました。


「おっす、菜乃葉」


 ひかりちゃんは私と中学からの付き合いで、ムラケンの事件の後に仲良くなった友達です。ああいう事件をきっかけにクラスが団結してその弾みで、というやつです。


「購買……?」

「やっぱり聞いてなかったのね。牛乳なくなったから買ってくるって言ったでしょ?」

「ね、寝てたからわかんないよ」

「でしょうね。だってスカートの撮影したり、口の中に指突っ込んでみたけど、起きなかったもの」

「イタズラとして結構エグいことやってんな。そんでそれをされたことに対して反応が薄過ぎだろ」



「そうかなぁ……」

「そうかしら?」



 私とめるの声が被り、ひかりちゃんは苦笑いを浮かべました。


「証拠の写真見る?」


 めるが徐ろにそう言って、ケータイを見せてきます。

 そこには無表情でピースをするめると、その横で呑気に眠る私が写っていました。

 めるは画面をスライドします。

 寝てる私の顔がドアップになりました。この時点で、私の恥ずかしさレベルはマックスに達していました。

 めるはもう一度、画面をスライドさせます。

 そこには寝てる私の口の中に、めるが親指以外の4本の指を第一関節の付け根まで突っ込んでいました。


「いや突っ込み過ぎだろ!!」

「そうかしら?」

「菜乃葉に対して頭おかし過ぎるだろ……」

「そうかしら?」

「そうなんだよ。……ったく、学校では女神とかなんとか言われてっけど、どこがだよ。悪魔だろ、マジで。菜乃葉は私が守ってやらねぇと、いつかとんでもないことが起きちまいそうだな」


 ふたりはそんな会話をしていましたが、正直言って私の頭の中には入ってきてないのでした。私は頭の中はさっき見せられた写真のことで頭がいっぱいでした。

 だって、だってだってだって! めるの綺麗でかわいい指が私の口の中に入っていたんですよ!? お、思い出してください、私。私の口、私の舌! どんな味だった……!? 

 私はもうそれ以外のことは、考えられなくなっていました。

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