第26話 神さまと橘(1)
翌日。喫茶店。
国城会長に奏は自分が得た真実を伝える。
「――そうか」
どこかわかっていたような顔で国城会長は小さく頷いた。
そして、二人揃って悩ましい顔で腕を組む。
――そう。問題はこの後だ。
「さて――どうしましょうかね」
「そうだな――」
数秒の沈黙後、二人揃ってため息をついた。
どのタイミングで康に真実を伝えるか――。
「あら、懐かしい光景ね」
すると、二人の近くで聞き覚えのあるそんな声が聞こえた。
その声につられるように二人はその声の方向へ振り向く。
頭を抱える二人を前に現れたのは幸恵だった。後ろには夫の努もいる。
「あ、どうも、長谷川さん」
「幸恵と――努か」
国城会長は面倒な顔で幸恵を見ると、後ろにいた努を見るなり驚く。
「浩司。店以外で会うのは久しぶりだな」
白髪交じりの短髪に無口な雰囲気を出す努は国城会長にそう微笑んだ。
「そうだな。ここに努がいるってことは定休日か?」
努の存在に国城会長は推測しているような顔で言った。
「たまには――な。にしても、どうした二人揃ってそんな顔をして?」
努は眉間にしわを寄せ、あまり見たくないような顔をする。
「そんな難儀な仕事なのかしら?」
幸恵は不思議そうに首を傾げる。
気がつけば、国城会長の隣に努、奏の隣に幸恵が座っていた。
――まるで町内会の会議のような雰囲気。
「まあ、難儀――だな、奏」
「そうですね――先生」
思い返すように二人揃って小さく頷く。
「お前らが揃って、そうなるとは――――康か?」
努は横にいる国城会長を細い目で見つめる。
「康さん・・・・・・。秀美さんのこと? そうなの、神さま?」
気がついた顔で幸恵は奏と国城会長を交互に見つめる。
「まあ、そうですね・・・・・・」
困ったように奏はそう言う。
「努、どんぴゃだよ。よくわかったな」
呆気にとられたような顔で国城会長は言う。
「そりゃ、わかるよ。――君たち二人が難儀と思う町内の案件は思い付く限り、それしかない」
努はどこか誇らしげな顔でそう言った。
「ははっ。定食屋の情報は伊達じゃないな」
「それで、どうするの神さま?」
詳細を聞かずに幸恵は結論を奏に聞く。
「我々は真実を橘さんに伝えたいんですよ。そのタイミングをどうしようかと・・・・・・」
「なるほど・・・・・・、それは難儀だな」
努も悩んだ顔になり、この場の男性陣は全員悩んでいた。
幸恵はその光景を眺めながらも、冷静に考える。
「それなら、今週末の町内会の時でいいじゃない?」
何食わぬ顔で幸恵は言う。
「おっ、それだ」
国城会長はハッとした顔で幸恵に言う。
「なるほど、そのタイミングがありましたね」
――それじゃあ、今週の日曜日か。
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