第17話 奏と京子(2)
「――神さま」
幸恵の背中を見送る奏に不思議そうな声で京子が言った。
「ん? どうしたの?」
振り返り、奏は京子の顔を見る。
どうしてか、きょとんとした雰囲気が彼女から出ていた。
「神さまって、ずっとこの町にいたんですか?」
ふとした疑問なのか、京子は聞いてくる。
おそらく、幸恵との会話を聞いてだろう。
「ずっと――ではないよ。戻ってきたのは最近だし」
考えた後、奏は思い出したような顔で言った。
事実、実際に住むのは七年ぶりくらいである。
「えっ――? 戻ってきたんですか?」
奏の言葉に京子は意外そうな顔をする。
そして、何を思ったか瞬きを繰り返し、呆然とした顔で奏を見つめていた。
「うん。色々あってね」
呆然とした顔の京子に奏は苦い顔をする。
気持ちが顔に出る――。
姉さんと同じだった。
「色々です――か?」
口をぽかーんと開けて、京子は不思議そうな顔をする。
変わるその表情が自然と愛らしく思えた。
「うん。色々だよ。まあ、恋人にフラれたからとか――色々だよ」
奏はため息をつき、情けない顔で京子に言った。
自分が言ったことに嘘は無い。
ただその色々の中身が濃すぎるだけだ。
「えっ、フラれたんですか?」
奏の姿に京子は再び瞬きを何度も繰り返した。
まるで、連続撮影のよう。
ここに来る前の神さまには恋人がいて、その恋人にフラれて――。
そもそも、神さまの隣に女性がいる風景が――想像できなかった。
「――まあね。悪いのはこっちだったからね」
引きつった笑いをして、奏は小さくため息をついた。
奏は当時の彼女に平手ビンタをされたことを思い出す。
「そうなんですか・・・・・・。なんかすみません」
申し訳なさそうに京子は俯いた。
「まあ、仕方ない。――人生色々あるだろ?」
奏は問いかけるようにそう言って微笑んだ。
そう。人生色々あるのだ。
――僕も彼女も。
「――そうですね」
京子は納得した顔で小さく頷く。
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