第9話 京子の日々(1)
学校のお昼時間。
「ねえ、京子。京子って、普段家で何しているの?」
お昼ご飯を食べながら、紗英は不思議そうな顔で聞いてきた。
この町に来た私が何をしているのか――。
京子は考える。
「んー、ご飯作ったり、洗濯したり・・・・・・とかかな?」
頭に思い浮かんだことを京子は言う。
考える中、奏が二度寝してないか心配になった。
神さまを起こしても、その後部屋に戻り、二度寝していた記憶が何回かある。
休日は特に起きるのが遅かった。
まあ、私も平日よりも遅い時間になってしまうけど。
あの感じでよく社会人が出来ていたものだと、京子は逆に感心していた。
さくらぎを始める前の仕事は、
起きる時間とか自由な仕事だったのかな――?
ふとした疑問を京子は抱く。
「・・・・・・あれ? 京子は家族と暮らしてないの?」
ふいに疑問に思ったのか何食わぬ顔で紗英は聞く。
一瞬、京子は言葉に詰まった。
「色々あって、今は祖母の知り合いの家で暮らしているよ」
変に気を遣わせてはいけない――。
京子は経緯を飛ばして、現状のみを伝える。
「あっ、そうなんだ・・・・・・」
しばらく考えた後、紗英は申し訳なさそうにそう言って俯く。
「一ヶ月くらい二人で暮らしているけど、やっと落ち着いてきたかな」
この一ヵ月を京子は振り返るようにそう言った。
最初はどうなるか怖かったけど、今は不思議と恐怖心ではなく安心感がある。
「二人でって・・・・・・女性?」
気がついたように紗英はそう言うと、不思議そうな顔をする。
「若い男の人だよ」
京子は何食わぬ顔で言った。
確か神さまは二十五歳って言っていた気がする。
十分、若い年齢のはずだ。
「えええっ? 大丈夫なの?」
信じられないような顔で紗英は京子を見つめる。
「うーん、今のところは・・・・・・」
京子は紗英の言葉で今までの奏との日々を振り返っていた。
特に・・・・・・、何もない。
良くも悪くも。
京子は複雑な心境になる。
「その・・・・・・何かあってもさ、京子一人だったら逃げられないよ?」
紗英は何を想像しているのか真っ赤な顔で言う。
「それは――」
深刻そうな顔で俯き、京子も想像する。
確かに逃げられない。
迫られたら、今の私じゃ抵抗も出来ないかもしれない。
と言うより、自分の気持ちは置いといて、
今の自分の立場で逃げていいのだろうか。
そんな考えも京子の中にはあった。
「――それは無いかな」
考えた末、京子は呟くようにそう言う。
神さまはそんなことはしない人だ。
京子は不思議な自信があった。
「京子はその人のこと信頼しているんだね」
ほっとした顔でそう言うと、紗英は微笑んだ。
「うん」
京子は笑顔で頷いた。
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