第27話 〜アンチバルレベル3〜

 俺達はAntsybalの巣へと向かう。初めて行った巣の様に地面に大きな穴があいていた訳ではなく,はるかに小さい入口だった。入り口に関しては鉄騎一体がやっと通れるぐらいの大きさだった。

 「一番始めは私が先導するから合図したら話していたフォーメーションになって!」

 「「「「了解」」」」

 「じゃあ行くよ!」

 

 俺は一番最後から後をついていった。

 中へ入ると少しずつ幅が開けてきた。やっと鉄騎が自由に動ける程の広さになった。

 「じゃあそろそろ恵ちゃん先頭に出てきてもらっていい?」

 「やっと出番か!! 待ちわびたぜ恭子ーーーー!」


 すると一気に先頭へと躍り出る恵。後を続くように彩乃も恵に続く。

 「これからAntsybalが正面から出てくると思うけど,どんどん進んでいって!」

 「私に任せな! 全部ぶっ殺してやるよ!」


 今まで我慢してたからなのか? いつもよりも威勢が良い!

 前からAntsybalが出現してきた。レベル2だろう。恵と彩乃,そして雷斗がすぐに処理してくれる。恭子の指示で迷路のように入り組んでいるこの巣を案内していく。


 俺は恭子の言われた通り後ろからくるAntsybalと攻撃を警戒する。バリアを常に張っていれば,そこまで心配する必要もない。そしてドローンを展開して後ろのAntsybal

には攻撃し撃退していく。


 とにかくスピード重視でどんどん巣の奥へと進んでいく。

 と同時に瞬時に道案内をしていく恭子。中に入って余計に思うが,こんな迷路のような巣をすぐに案内出来る恭子の頭の中は一体どうなっているのか??

 大佐は俺達に対して,この任務を成功させる気がないのでは? と思ってしまう!


 順調に俺達は進んで行く。

 「次は右!! 左!! 三つ道があるけど真ん中の道をまっすぐ!」

 「おりゃ! 死んでけクソ野郎ども!」


 巣の奥に進むにつれて,Antsybalの強さも強くなってきた。そろそろ巣の最深部に到達する頃だろうか。

 「恵ちゃんそのまま真っ直ぐ!!」


 するとドーム型のとても開けた場所に到達した。多分ここがここの巣の最深部だろう。

 奥の方で何やら動いているのが見える。今までで一番大きな巨体をしたAntsybalがいた。きっとあれがレベル3なんだろう!

 初めて見たレベル3。しかし一体だと聞かされていたレベル3はなんと二体いたのだ。

 周りにはレベル1のサナギが大量にいる。

 

 「レベル3が二体いるわね! 戦えないわけじゃない。ギリギリで勝てる計算だけどどうする??」

 「んな事関係ねぇーーー! 私がぶっ飛ばしてやんよーーー!」

 やはり恵が一番最初に突っ込んでいく。

 「恵ちゃんと彩乃ちゃんで一体ずつ対応して。雄二くんと雷斗くんはフォローお願い!


 「めんどくせ〜けど仕方なぇ〜な! いくしかないか!!」

 「了解した」


 片方のレベル3は調査で確認された個体で,もう一体はきっと最近生まれたレベル3なんだと思う。恭子や授業の話しではレベル3は時間が経てば経つほど強くなっていくらしい。脱皮を定期的にするらしいが,脱皮をする度にレベルアップしていくような感じだという。


 だから片方はレベル3の中でも強い方でもう一体はその中では弱い方になるのだと思う。

 ただ,恵が突っ込んだおかげでどっちがどっちか全然わからない。

 レベル3の特徴として長い角を携えてて,角で物理的に攻撃をしてくる。恵との戦闘を見ていると恵の攻撃を角で捌いている。やはり強敵という事か……


 彩乃の方はむしろ彩乃と距離を取って戦っている。彩乃の一撃を食らって警戒したのか,近づいてこない。知性もあるという事なのかもしれない。


 「恵ちゃん! 一人で少しの間レベル3と戦える?」

 「あぁ!?!? なんなら一人で倒してやるよ!!」

 「じゃあ任せるわ! 彩乃ちゃんの方のレベル3を四人で片付けましょ」


 リーダーの恭子が判断し,俺と雷斗,彩乃と恭子で一体のレベル3を相手にする。

 「こっちを四人で早く倒して,恵ちゃんの方へフォロー行きましょ!」

 「長い時間は厳しいと思うから,こっちの方は早めにいきましょう!」


 そう言った瞬間,雷斗が遠距離から攻撃を開始した。

 とてつもない連射でレベル3に弾を当てていく!


 俺は彩乃のカバーをしようと思うが,相手が距離を取るばかりで,彩乃自身も攻めあぐねいている。俺も攻撃に参加しようにもドローンの攻撃をしたとしても当てられない。

 今攻撃を当てているのは雷斗だけだ。雷斗の攻撃は致命的なダメージを与えているようには感じない。


 威力を連射でカバーしようとしている雷斗だが,もしかしたらレベル3にはあまり通用しないのかもしれない。

 と思っていたのだが,飛んでいたAntsybalの羽が突然取れて飛べなくなった。レベル3は地面に叩きつけられた。


 「やってやったぜ! どうだこの野郎」

 「雷斗くん流石ね!」


 「今の雷斗の仕業なのか?」


 「え!? そうだよ! 飛んでるのが面倒くさい感じだったからな。羽の付け根を狙いつ続けて,羽破壊してやったぜ!」

 あんな動き続けている敵を相手に正確に付け根を狙い続けたのか?


 確かに雷斗の射撃の攻撃力は低いのかもしれない。レベル3相手にはほとんどダメージを与えてなかった。俺が編み出したレーザーと比べたら威力だけなら俺の方が圧倒的に上だろう!


 だが,こんな場所で俺の攻撃は繰り出す事は出来ないし,周りにも被害が出て生き埋めだろう。雷斗のような繊細な射撃技術でフォローするのを見ると凄いの一言しか出てこない。


 落ちてきたAntsybalのチャンスを彩乃は見過ごさなかった。

 独特な攻撃でピンポイントで攻撃をしていく。


 飛べなくなったAntsybalは彩乃の攻撃を食らうしかなかった。


 Antsybalの動きがだんだん鈍くなってくる。

 彩乃が最後にレベル3の首をねじ切った。


 すぐさま恵のフォローに全員でいく。


 恵の方は大丈夫だろうか? と目をやると,とんでもないスピードで戦闘を繰り広げていた。正直俺には見えない。


 「おいおいおいおい! 速すぎだろ! フォローっていったって,誰もあそこに入れないだろ!」

 「雷斗くん,この中で射撃してフォローする事出来る?」


 「出来なくはないが,恵の邪魔になりそうな気がする」

 「確かにそうかもしれない。恵ちゃんは普段全力のスピードではなかったのね。でもこの中でもフォロー出来るようにならないといけないわね今後は」


 俺達の目の前で繰り広げられている攻防は割って入る余地がなかった。

 一瞬攻撃が止まる。お互いがお互い相対している。


 恵の双剣の一本が破壊されたのか,一本で戦っているようだった。しかし,恵の新たな足から刃はまだ出していないようだった。隠し玉として残しているのか? 考えがあるのかわからないが,恵自身も考えて戦っているようだと思った。


 そしてまた攻撃が始まった。時間にしたら本当にちょっとの時間だったと思う。だが何の位の攻防があったのかはわからない。

 恵がレベル3の首を刈り取り,Antsybalの首を持っていた!


 恵が一人でAntsybalのレベル3に勝ったのだ。

 「オラーーー!! クソ野郎!!」

 恵が騒ぐ。


 俺達はレベル3がいる中で完勝したと思う……

 「レベル3って最初はビビってたけど危なげなく勝てたな」

 「それは雄二くんのおかげね! 巣にいるレベル2がここに大量に向かってきてると思うけど,入り口をバリアで防いでるから,あんな風に入って来れてないでしょ」

 「だからレベル3に集中して戦う事が出来たけど,もし雄二くんが居なかったらあのレベル2も同時に相手にしなければいけなかった。そうなってたらこんな無事で済んでないわねきっと!」

 事前の作戦で,最深部に到着したら,入り口をバリアで覆って入って来れないようにしてほしいと恭子に言われていた。


 「まあそうだな」

 「雄二ささっとバリア解除しろよ!! 私がぶっ殺してやるからさ!!」

 「私もいつでもいけます」


 「どっちにしてもAntsybal倒さないと帰る事も出来ないから戦うんだけども!」

 「じゃあ第二ラウンドと行きましょうか!!」


 俺は入り口に入って来れないようにしてたバリアを解除した。

 なだれ込むようにレベル2が押し寄せてきた。


 乱戦となった。どの位の時間戦っただろうか??

 やっとAntsybalを殲滅し終わった。


 「もう終わりか!?!? Antsybalのクソ野郎共!!」

 「きちぃー!! やっと終わりか?」

 「巣の全部のAntsybalを倒したなんて事はないと思うけど,大体は倒せたんじゃないかしら?」


 「今までで一番数が多かったですね。雄二さんが居なかったらこの数とレベル3を相手にしなければいけなかったと思うとゾッとしました」

 「なんとか乗り切ったわね。周りのレベル1の殲滅と帰りがてらAntsybalを倒して任務完了ってところかしらね。後の残党狩りは任せましょう」


 俺達はなんとか今回の任務を成功した事に安堵した。帰りはAntsybalにそんなに出くわすこともなく,地上に戻る事が出来た。

 地上に出ると,三年生が巣の近くまで来ていた。


 時間が予想より大幅に経過してたため,何かあったと思い,心配になって巣の近くまで来てくれたみたいだった。


 藤井が三年生に報告を済ませた。すると三年生が一応確認しに巣の中に入っていった。

 すぐに三年生達が戻ってきた。三年生の皆さんに褒めてもらえた。

 この任務を一年生で達成出来るのは凄いと言われた。


 今回の任務で俺だけじゃなく,チーム全体で成長出来たと実感が湧いた。

 三年生と共に,学校へと戻る。


 戻ると大佐と先生が待っていた。恭子は報告の為に大佐に連れて行かれた。

 先生が一言。


 「よくやったなお前等」

 珍しい発言を先生から聞いて,全員で顔を見合わせた。


 「先生ってあんな事言うんだな!」

 「ああいうギャップがいいよなぁ」

 と雷斗が言う。

 

 「私達はあっちで休みながら恭子さんを待ちましょうか」

 「そうだな」


 やっと一段落つける事になって,椅子に腰を掛けると思っていた以上に疲れていたのか,疲労感がどっと押し寄せてきた。

 俺はウトウトしてしまった。


 「ほら!! 皆起きて!」

 恭子のその声を聞いて寝ていた事に気付いた。俺以外の他の四人もウトウトしていたみたいだった。

 戻ってきた恭子の隣には冬月大佐がいた。


 「皆任務ご苦労だったな。たった今藤井と三年生からの報告を受けて,任務が成功した事を聞いた! 一年生であの任務を遂行出来るのは中々出来ることじゃない。誇っていい」 


 「三年生との模擬戦だが,三日後に行う事にした。準備をしておけ!」

 「大佐! 三年生に模擬戦で勝ったら作戦に選んでくれますか?」

 「ああ! 約束しよう。今日の結果を踏まえて三年にも勝つようなら,殲滅作戦に加えてやる」


 「では私は失礼する」

 「あ!? そうだ雄二。伊藤研究員が呼んでいたから後で研修室を訪れてくれ!」

 「わかりました!」

 そう言って大佐は俺達の前を後にした。


 「とりあえずはなんとかなったね! 大佐は任務を遂行出来ると思わなかったって言ってたよ。あえて結構難しい任務にしたとも言ってた。そんな中で任務を遂行出来たんだから私達はちょっとは強くなったと言ってもいいんじゃないかな?」


 「いや! めちゃくちゃ強くなっただろ?」

 「私が入った頃と比べたら段違いで強くなったと思いますよ!」


 「私は……元から強い……」

 「恵ってそういう事言うんだな」

 俺はほくそ笑んだ。


 「まあまあ何事もなく,誰も怪我もせずに任務が終わって良かったじゃない!?」

 「恭子の言う通りで,とにかく良かったよ! 後は三年生との模擬戦に勝つだけだよ!」

 「そんな簡単に勝てねぇだろ! 言うたって!」

 「一番は経験の違いね。そして修羅場のくぐってきた数が違う」


 「恭子さんどうなんですか? 今日より厳しいですか?」

 「多分今日のレベル3との戦闘より厳しい戦いになると思う……」


 「とにかく今日は上手くいったんだからいいでしょ!」

 「俺ちょっと呼ばれてるみたいだから先にいくわ」

 「大佐が言っていたわね! 分かったわ雄二くんお疲れ様」


 俺は一足先にその場を離れ和久さんはいる研究所へと向かう。

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