第26話 〜アンチバル討伐作戦〜
次の日俺は朝早く,夜明け前に目が覚めた。普段と違って身体が疲れてなかったからなのか,わからないが早くに覚めてしまった。二度寝すればいいのだが,眠れそうになかったので,透を起こしちゃ悪いので,俺は寮の周りを散歩することにした。
朝の敷地内を歩くのも初めてだし,こんなに早く起きたのも初めてだ。
霧が立ち込めている中,俺は寮の外を歩いた。
そんな中で,誰かの声が聞こえる。声とまではいかないが,息遣いが聞こえてきた。
朝早く誰だろう? と興味が湧いたので,声のする方へと向かった。
そこに居たのは,山口先生だった。俺の気配を感じたのかすぐにこっちを見た。
「なんだ! 雄二か! どうしたんだこんな朝早くに」
「いや! 目が覚めちゃって。ちょっと散歩してたら先生が居たんです。先生こそ何やってるんですか?」
「私か? 私はちょっと体を動かしてただけだよ!」
「先生が体動かしたりとかするんですね」
「あぁ!? それはどういう意味だよ!」
「いや! 先生って面倒くさいってタイプそうだったもので……夜は酒飲んで朝まで寝てそうなイメージを持ってたもので……」
「一つ言うけど,私は酒全然飲めないからな!」
「え!?!? 絶対ウソだ!」
「嘘じゃねぇ〜よ! まあ飲めたらもしかしたら楽なんだろうけどな!」
「じゃあなんで先生,あんなに毎日毎日眠そうなんですか?」
「なんだよ雄二! 私が酒飲んでるから毎日眠そうだと思ってたのか? 単純に眠れないだけだよ。不眠症なんだ」
「意外です……」
「意外とはなんだよ。雄二お前結構失礼なやつだな!
「いや……あまりにも想像と違ったんで」
「まあいいや! それより今日は頑張れよ! でも無茶はするなよ?」
「はい! 頑張ります」
「私はそろそろ行くから。遅刻するなよ〜」
山口先生は去っていった。
俺は部屋に戻り,シャワーを浴びてゆっくりした。今日は余裕を持って学校へ行こうと思い,普段よりかなり早く食堂へと向かい,朝の支度を済ませた。
いつもの時間に透を起こし,俺はそのまま学校へと向かった。
学校に着いて教室に向かう。朝早い登校だから,正直だれもまだ来ていないと思っていたら,意外にもチームのメンバーが何故か全員いた。
「あれ? 雄二くんも今日は早いわね!」
「え!? なんか目が覚めちゃってね。というか雷斗がいる事にびっくりなんだけど」
「なんだよそれ! 皆して同じ事言うじゃん」
「いや〜だって一番好きなことって寝る事だろ? それを切り上げて学校に行くなんてって思ってさ」
「間違っちゃいねぇ〜けど,まあ今日はなんでか寝れなかったんだ」
「雷斗くんいつも寝坊助……」
「うるせーな!」
「まあでも皆それぞれあるけど,早く学校に来ちゃったって事ね」
「私はいつも早いですけど」
「まあそこは彩乃ちゃんご愛嬌で」
「今日は大変だと思うけど頑張ろうね!」
「了解リーダー」
少しすると徐々に他の皆も学校に登校してきた。
普段の賑やかさがそこにはあった。
最後にギリギリで透が教室に入ってきた。
「透ギリギリ過ぎだろ! ちゃんと起こしたのに」
「朝飯食べたら,微妙に眠くなって,寝ちゃったんだよ」
「透くんはそういう所本当に駄目だよね。しっかりしないと!」
「え!? まあそうだな……」
恭子に言われたからか,凹んでいた。
山口先生が教室に現れて学校のいつもの日常と授業が始まる。
そして遂に鉄騎の演習が始まった。俺達のチームが行く場所と危険度はこの授業の始めに大佐に初めて言われた。あえて事前に伝える事はしなかったらしい。そんな中でも対応が出来るかどうか? が見たいと大佐が言っていた。
「それとこれをリーダーに渡しておく」
恭子が渡されたのはボタンだった。
「もし何かあった時,限界だと思った時はこのボタンを押せ。そしたら待機させてる三年生に突入されるから! 無線が使えなくなる場合があるから渡しておく」
「分かりました。ありがとうございます」
「では健闘を祈る」
「大佐も中々厳しい事をお前達にさせるなぁ〜! まあ無茶だけはするなよ」
「「「「「了解」」」」」
俺達はメンバーで集まった。
「藤井今日行く所はどうなん?」
雷斗が恭子に訪ねた。
「ごめんちょっと黙ってて。十分だけ時間頂戴」
初めて見るが,恭子は物凄い集中した眼差しをして,今日行く場所の資料を見ていた。
資料と言っても,今さっき渡されて処理できる把握出来る量ではない!
「とりあえず恭子さんが話すまで待ちましょう!」
「恭子ちゃん怖い……」
十分経っただろうか……恭子が深く息を吐いて話し始めた。
「よし! 時間があんまりないから,移動してる時も説明しながら移動するけど,今日行く所は場所が大変な所よ」
「これを見て?」
見せられたのは地図と思わしき物だった。見ると入り組んでる事が見て取れる。
「見て分かると思うけど,巣が地下に伸びていてまさにアリの巣といった感じのAntsybalの巣が今日のレベル3がいる巣になる」
「多分だけど,最も奥のここにレベル3がいるとは思う! そこまで調査を出来ていないみたい。相当緊張感を持って挑んで欲しい。それと私が後ろから道順は指示するから絶対に守ること! 恵ちゃん頼むわよ!」
「一歩間違ったら逃げ道を無くして挟まれてかなり危険な事になりかねないから,絶対に間違っちゃ駄目。私が今さっき地図は暗記したから頼むわよ!」
たった今さっきでこの地図を暗記したのか? 恭子って本当に見えない所,鉄騎の戦闘以外の能力がずば抜けてると思うことが多々ある。
戦術や地形,任務で行くAntsybalの事など詳しい事は本来なら皆それぞれ学んだり頭に入れておくべきなんだろうけど,恭子が徹底的に予習して教えてくれるから,俺達は恭子に頼りっぱなしになっている。もし仮に恭子が居なくなったらチームとして機能しなくなるだろう!
「うん……わかった」
珍しく恵がうなずいた。地図に書き込まれた巣の複雑さを見て任せようと思ったのだろう。
「私も恭子さんの指示に従います」
「そうね彩乃ちゃんも前にいると思うから間違えないように,恵ちゃんが暴走してるようだったら止めてね」
「分かりました。恵さんの事は任せてください!」
「彩乃ちゃん任せた! 後ろも警戒しつつ進まないと行けないから前ばかりに集中する事ができないから」
「後ろの警戒は雄二くんに任せてもいいかしら? 私も警戒はするけど,出来れば雄二くんに任せて私は道案内に集中したい」
「了解した」
確かに今覚えた道順を他の事をしながら教えるのは無理だ。
俺はチームの為にやれる事をやるだけだ。
「雷斗くんは前の敵の援護を! どんどん遠くから狙ってほしい。この巣は止まるとどんどんAntsybalに囲まれちゃう造りになってると思うの。だから止まらないでそのまま最終地点まで行きたい。きっと少しでも止まったら進めなくなる」
「なるほどな! 藤井この巣はそういう造りをしてるのか?」
「あくまで予想だけどね! 造り的にはどんな所からでもAntsybalが出て来ると思うしどこにいてもおかしくない。だからこそ止まったらお終いだと思って」
「雷斗くん,恵ちゃん,彩乃ちゃんで前の敵をどんどん倒していって! それでどんどん進んで欲しい!」
「「「了解」」」
「それで恭子レベル3の対策はどうすれ良い?」
「それは行ってみないとわからないし、正直ここで仮に綿密な作戦を立てたとしても、恵ちゃんの行動一発でどうせ意味がないから」
「作戦の考えもあるけど、意味がないと思ってるから気にしなくていいと思う! まずは巣の最も奥の場所まで行く事だけ考えてくれればいいから」
「了解した!」
「じゃあそろそろ出発しましょうか」
三年生と一緒に行くことになる。三年生のチームはまさかの会長のチームだった。会長を抜いた四人で今回は俺達の任務の子守りをしてくれるようだ。
会長以外の他の四人も実はとんでもない実力者である事を恭子から聞いた。
三年生は巣の近くまで案内してくるみたいだ。
巣に向かってる中で、恭子が任務の詳細や注意点、今回の任務の危険度などをもう一度説明してくれたが、俺は具体的に思い描く事ができない。
多分他の四人も恭子程分かっていないんだと思う。
恭子だけが資料全体の把握、理解しているからこそ大変な場所へ向かう事がわかっているんだと思う!
緊張しているのも一つの要因だと思うが。いつもよりも恭子の声が不安なのが伝わる。だからこそ皆にも緊張が伝わってしまったのかもしれない。
俺はこの場を和ませようとした。
「あ~恵って好きな人とかいるの!?」
「あ!?!? 雄二テメーこの場でぶっ飛ばされてぇのか!?」
「雄二急にどうした? しかも恵に!」
雷斗の笑い声が聞こえる。
「いやーなんとなく! 鉄騎に乗ってる時の恵だったら色々話してくれるかなとか思って」
「それで好きな人とかいるの!?」
あえて俺は少し突っ込んでみた。
「私にはこの鉄騎とAntsybalと戦えればそれで良いんだよ!!」
「男なんて必要ねぇ」
「そうなの!? 意外に好きな人いると思ったけどな」
「雄二さん急にどうしたんですか?」
「なんか皆の雰囲気が緊張しててそんなに緊張しても良くないと思ったから場を和ませようと!」
「それにしたって恵に聞くって雄二中々やるな~」
「豹変してる時の恵に女子が好きそうな話を振ったらどうなるのかなーと思ったんだけどな。いつもと変わらないみたいだな」
「あぁ!? 雄二てめぇ〜なめてんのか!?」
「そんなつもり全くないけど!」
「彩乃と恭子って好きな人いるの??」
どさくさ紛れて二人にも聞いてみた。
「そういえばさ,高校生なのに,カップルとかいる雰囲気ないよね? この学校って! 俺がいた世界だと結構いたんだけどさ。恋愛とかってこの世界どうなってんのかなって」
「私も……好きな人はいないです」
「そうなの!? そうなんだぁ……」
「女性陣は女性陣でさ友達とかとそういう話ししないの??」
「するよ! するよ!」
「でも雄二くんの世界がどうだったのか? は分からないけど,私達の世界だと高校卒業するまではあまりしないほうが良いというのが一般的というか,それが普通って感覚が多いと思う」
「そうなの!? そういう感じなんだ」
「むしろ雄二の世界ってのはどんな感じだったんだよ!」
「え!? クラスの女の子のほとんどは好きな人はいて,告白して付き合ったりとか別れたり,また付き合ったりと自由な恋愛が普通だったかな?」
「そういう世界もあるのね! 少し憧れる」
「俺はこの世界は財前みたいな事が起こりえるから,もっと盛んだと思ってた」
「ん〜小さい時から一緒だから恋愛に発展しにくいのもあると思うの」
「なるほどな〜それは確かにあるかもしれない」
俺達は何故か俺が発した発言で恋バナで盛り上がってしまった。
しかし,皆から出ていた妙な緊張感はいつの間にかなくなっていた。
しばらくすると,三年生の鉄騎が止まった。
「私達が案内するのはここまで! ここから先は君達だけで。無茶はしない事いい? 駄目だと思ったらすぐに応援を呼ぶか,逃げてくること」
「了解です」
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