第20話 〜クラス代表戦〜
開始と同時に俺達のチームはいつも通り,恵が前線で突っ込んだ。彩乃が後ろから追いかける。
しかし,相手のチームは即座に全員後退し,バラバラになった。
とにかく近づいてくれない。恵が追いかけると全力で逃げる。
遠距離主体の攻撃で俺達に攻撃をしてくる。
そしてヒット・アンド・アウェイですぐに逃げる。
相当俺達の戦い方を研究したのかもしれない……
恵がもの凄く嫌がっている。これを目指していたのかもしれない。
「オラァァァァァァ! ちゃんとかかってこいやぁぁぁぁぁ!」
苛立ってるのが傍から見ていても分かる。
俺達のチームは良くも悪くも恵が中心である部分が大きい。
恵が暴れる事で雷斗の射撃も映えるのだ。そして彩乃も相手の目が恵に集中しがちなので,好きに動く事が出来る。
目立つおかげで他の周りが目立たないから動きやすくなるという事がある。
これは完全に恵封じの戦法だと思う。
とにかくまとまらない。動く!
そして遠距離攻撃からのヒット・アンド・アウェイ。
止まる事がないから雷斗も射撃しづらいだろう。
彩乃も近接攻撃しかないので,相手を捕まえないと攻撃すら出来ない。
「みんな聞いて!!」
「なんだよ恭子ーーーー! うるせーーな!」
「このままだと長期戦にもっていかれて消耗させられちゃうわ!」
「相手はそれが狙いだし,超長期戦前提で作戦を組んできたんだと思う」
「藤井それで? どうすんだ?」
「加藤さんのグループの作戦は完全に私達のグループに特化した作戦だわこれは」
「つまりは簡単に言うと,めちゃくちゃピンチってこと!」
「だからどうするんだ!? って聞いてんだろうがよーーーー!」
「まあ落ちついて!」
「雷斗くん相手のチームの鉄騎に動いてるけど,撃ち込める?」
「いや! 簡単には当てられない。相当鍛錬して遠距離からの攻撃は当たらないって訓練をしてきたんだと思う」
「それに相手のチームは全員遠距離攻撃が得意だから,余計に弱点というか,されると嫌な動きを熟知してて中々難しい」
「ここで登場するのが,雄二くん」
「え? 俺?」
「そうよ! 恵ちゃんには悪いけど,あえてあまり動かずに的になってもらうわ!」
「今一番攻撃されてるのが,恵ちゃんだけど,動かなければ雄二くんのバリアで銃弾を全て弾き返せれると思うの」
「なんで私が的にならなきゃいけねえんだよ! おい恭子」
「まあ最後まで聞いて!」
「一瞬でも動きを止めたら雷斗くんも恵ちゃんも一騎倒せる?」
「いけるぜ!」
「ははは! 一騎じゃなく全部倒せるぜ」
「雄二くんビックリ仰天の攻撃あるわよね?」
「!?!?!?!? いや!? なんのことだが……」
「とぼけなくても私は知ってるからいいよ!」
「当てなくていい。当てなくていいから,相手のチームをびっくりさせるだけでいいからとびきりビックリなの撃ち込んでほしいの」
「なんで恭子知ってるんだよ!」
「今は説明してる時間がないから,とりあえず知ってるとだけ! 雄二くんがここにいる全員をビックリさせる攻撃をするからそのビックリして動きが止まった時に雷斗くんと恵ちゃんお願いするわね! 彩乃ちゃんもいけるなら倒してきていいわよ」
「雄二くん頼むわね! じゃあ皆準備はいい? 作戦開始」
「「「「了解」」」」
恵は相手を追っていた動きを止めた。止めた瞬間にものすごい数の銃弾が飛び交い打ち込まれている。しかし,動きを止めてくれるなら鉄騎を多い隠すバリアを作れば銃弾を防ぐ事が出来る。
恭子が言っていた,ビックリ仰天の攻撃とは,あれから鉄騎の攻撃手段の特に奥の手を作ろうと和久さんと共に模索していた。
模索していく中で思いついた攻撃があり,試してみた。そしたら見事に鉄騎から具現化する事が出来た。その時に完成した技の事を恭子は言っているんだと思う。
「雄二くん準備はいい? いける?」
「オーケー! いつでもいけるぜ!」
「じゃあかましちゃって!!」
爆音と共に,目の前が真っ白になる程の光が差した。
俺が放ったのはとんでもない広範囲のなんでも焼き尽くすようなビーム。
そう俺はとんでもない質と量,そして馬鹿みたいな範囲のビームを撃ち出す事が出来たのだ。初めての時は空に向かって撃ったのだが,その時は空が割れた!
勿論鉄騎にもAntsybalにも物質に向けて撃った事はまだない。
和久さんがいうには,とりあえず本当に危険な時まで隠しとけと言われたのに,すぐに使う事になるとは思わなかった。
正直鉄騎に当たったら全てを焼き尽くして殺してしまうかもしれないと思ったので,勿論当たらないような軌道で放った。
ここに居た全員がビックリしたのかもしれない。そして相手のチームの鉄騎は本当に足を止めた。
雷斗と恵はその一瞬のスキを見逃さなかった!
放ったビームが消えて目の前がちゃんと見えるようになった時には相手の鉄騎が三体戦闘不能になっていた。彩乃も相手の鉄騎を倒したんだと思う。
そのまま他の鉄騎も追い詰めようとした瞬間――
「終了〜!! 攻撃やめろ! 模擬戦はここまで」
先生の声で終了の合図が入った。そう俺達は勝ったんだ。
鉄騎から降りて俺達は先生とクラスメイトが待つ場所へと行く。
「お前たちお疲れさん。結果通りうちのクラスからは藤井のチームを選出する」
「加藤! お前達のチームも落ち込むことはない。雄二の攻撃がなかったら,追い詰めていたのはお前たちのチームだったはずだ! 自信を持て!」
「ありがとうございます」
「雄二! お前あの攻撃はずっと隠していたのか?」
「隠していたというより,もしもの為に用意していたという感じです。模擬戦で使うなんて想定してませんよ! 何かあった時,つまりは財前と居た時のような想定外でピンチに陥った時の為の攻撃手段です」
「そうか。分かっているならいい! 模擬戦ではもう使うな! 下手したら死人が出るかもしれないからな」
「はい……分かりました」
「じゃあお前達がクマクラスの代表チームだ! しっかりやってこいよ!」
「「「「「はい」」」」」
俺達は一年の選抜として殲滅作戦に参加する事が決まった。
殲滅作戦なんていうけれど,俺達一年生は中心の場所とは離れた所に居るレベル0やレベル1を倒す事がメインになるという事を山口先生から聞いた。
雷斗は特に選ばれた事を喜んでいた。意外に恵も表には出していないが,嬉しそうだ。
寮に戻ると透と翔太と茂人が俺と雷斗を誘って食堂で祝杯をあげた。
特別に何かあった訳ではないが,選ばれた事を祝ってくれたし,喜んでくれた。
食堂の飯田のおばちゃんは相変わらず特大な大盛りをしてくれた。
これがこの男子寮の祝い方なんだろうと今では思っている。
部屋に戻ると透が俺に話した。
「なんか雄二,転入してきてからあっという間になんか成長したな」
「そうか? そんな事自分ではわからないけど……」
「最初来た頃は走るのも組手だって全然出来なかったのにな!」
「今でも出来ないよ!」
「それでも鉄騎に乗れば誰よりも凄いじゃないか。今日の攻撃ビックリしたぜ」
「いつの間にあんな強力な攻撃身につけたんだよ」
「え? 財前の事があったから隠し玉として軍の研究者の人の意見と力を借りて完成したというより発見したんだよ」
「俺さ,財前が死んだ後雄二達のチームに名乗りを上げたんだよ! 俺を入れてくださいって。財前には悪いけど,チャンスだと思ったしさ……」
「そうなんだ……」
「それで先生と大佐にお願いしに行ったんだよ。そしたら先生にはっきりと言われたよお前には鉄騎乗りとしての才能は無いと……」
「全てが平凡で特出している所がないと……藤井のチームはむしろその逆,バランスはないが,特出してる奴らを集めたチーム編成にしているんだと説明してくれた。他のチームとかならまだしも,藤井のチームにお前は必要ないとさ!」
「もし入りたいという強い思いがあるなら,鉄騎乗りとして何か才能を見せてくれだってさ……他の誰にでもないお前だけの力を身に付けろって言われちまったよ……」
「まあでも確かにそうだよな。今の俺じゃあお前達のチームに入っても足手まといにしかならにもんな。今日の模擬戦を見て尚更思ったよ」
「透……」
「いや! まあ別にいいんだ。なんとなく分かってたことだしな! でもそれでもお前ら二人のチームに俺も入りたかったんだ」
「いいんだとりあえずはもう。彩乃が新しいメンバーで決まっちゃったしな!」
「透――頑張れ!!」
「なんだよそれ! 唐突に!」
ふと俺は和久さんに言われたこの言葉を透に投げかけた。透は不思議そうなそして悲しい,悔しそうな表情を浮かべながら作り笑いを俺に返した。
「こういう時こそ食って元気出せってこの寮では言われそうだけど,もう食ったしな」
「でもさ透,チームとして一緒じゃないけど,恭子の彼氏には名乗りを上げちゃえよ」
「なっ! 何言い出すんだよ!」
「だって好きなんだろ? 告白して恭子を捕まえちゃえって」
「でも……俺は正直自信がない」
「透――今までの俺だったら,まあそうか。で流す所だけど財前の一件があってから,俺達は訓練でさえ命を落とす可能性だってある事を痛感したんだよ」
「それに今の俺のいるチームは一年生だけど,多少危険な場所や任務にこれから行くと思う。危ない目にだって合うだろう。もしもだけど,いなくなったら後悔するぜ?」
「そんな事言うなって。分かってるけどさ! 振られたらどうするんだよ?」
「その時はその時考えりゃいいさ! 振られても飯食って元気だしゃあ良い!」
「よし! 俺決めたわ! 殲滅作戦終わって帰ってきたら俺恭子に告白するわ」
「おお! いいじゃん! 応援するぜ」
俺達は話が盛り上がった。なんで恭子の事を好きになったのか、恭子についての話を沢山した。
そして俺は会長に教えてもらった秘密の場所を透に教えた。告白するならあそこの場所は使えると話した。
透もその場所を知らなかったようだ。感謝してくれた!
俺達はいつになく話が盛り上がった。俺達は話し疲れていつの間にか寝ていた。
忘れていたが、師匠との鍛錬をすっぽかした事に気付いたのは次の日の朝を迎えてからだった。
師匠にキツイお仕置きをされたのは言うまでもないだろう。
そして数日が経った。殲滅作戦を実行する日が訪れる。
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