第13話 〜遭遇〜
俺達は無事にAntsybalの巣の殲滅をする事に成功した。
「恵ちゃん,今回はたまたま良かっただけで,もし他のアクシデントがあったとしたら,突っ走って攻撃するのは良くないわ。逆にやられてたかもしれないんだから!」
「うるせぇ〜な恭子!! 私なら大丈夫だって! レベル3でも何でも来たって私の鉄騎で殲滅してやるよ!」
「本当にフォローする僕の身にもなってくれ。郡司は何も考えもなしに突っ込むなよ!」
「財前ほら! まさか私のフォローするなんてな! 似合ってるぜ財前! いい気味だぜ」
「いい気味ってどういう意味だよ。僕が居なかったらチームとしてまとまりがなくて,郡司だって戦うのも一苦労なくせに」
「そんな事よりさっさと帰ろうぜ!」
「俺も賛成!!」
「じゃあ倒し損ねた個体がいないか,確認して終わったら戻ろうか」
俺達は手分けして倒し損ねたレベル0やレベル1を倒していく。
「もうAntsybalもいなそうだね。では引き上げるか」
「意外と簡単だったなAntsybalといっても」
「敵が弱すぎてつまらなかったぜ全く!! もっと強い奴と戦いてぇ〜!!」
「特に何もなかったんだからいいじゃんか」
俺達は任務が終わった事で意気揚々と引き上げる事が出来る。恵や財前は物足りなかったのかもしれないが,誰も怪我もしないで終えることが出来た事が良かった。
陥没した大きな穴を俺達は昇り地上へと戻った。
「おい! 財前,暇だから私とここで一戦戦おうぜ!」
「馬鹿かお前は!!! いくら終わったからって外で戦う馬鹿がどこにいるんだよ」
「いいじゃんよ! 別にもう任務も終わったし,後はもう帰るだけなんだからさ」
「お! 恵と財前やるのか? やれやれ!」
「雷斗くん煽らないの! 雄二くんも何か言ってやってよ」
「こんな事やってないで,さっさと戻ろうぜ。戻ってから戦えばいいじゃんか」
「なんだ雄二! 雄二でもいいんだぜ戦うのは」
普段のようにじゃれ合ってると,一体のAntsybalが突如穴から現れた。
全体が赤い色で覆われていて,見た目は羽蟻のような形をしている。羽を使って空を飛んでいて,二足歩行なのか? 足が二本に腕が四本あるようだ。
俺がそう感じている内に恵と雷斗がすぐに攻撃を仕掛けた。
「チッ……」
一瞬で攻撃を仕掛けた恵の鉄騎の片腕がAntsybalに破壊されもぎ取られている。
雷斗の射撃の攻撃も食らった様子があるが,ダメージがほとんど効いてないようだ。
避ける必要がないって事か。
「おいおい! こんな敵がいるって聞いてないぞ! どうすんだこりゃ……」
雷斗が言った。
「私だって聞いてないよ! 恵ちゃん大丈夫??」
「あぁぁぁぁ!? この野郎,私の片腕取りやがってぶっ殺してやる」
「ギェェェェェェェェェェェ」
鳴き声なんだか分からない声をAntsybalが出している。
「おいおいおい! なんかヤバくないかこれ?? こいつレベル3じゃないよな?」
「こいつは多分変異種だレベル2の……」
「え!? 変異種!?」
「たまにレベル3より強い個体が現れるっていう変異種だきっと」
「あぁぁぁぁぶっ殺してやりてぇぇぇぇぇ!!」
「恵ちゃん落ちついて!」
「おいおい藤井!! この状況どうすれいい??」
「雷斗くん……私にも分からないわ。想定なんかしていないし,それに変異種ってのはデータとか情報がほとんどないから対策しようもない。ただ恵ちゃんの速い攻撃にも一瞬で対応して鉄騎の片腕を簡単にもぎ取るほどの強さがある事は間違いなさそうね。今の私達じゃ相手にならないと思う……」
「なぁ! さっきの鳴き声って仲間呼んだって事ないか?? なんか近づいて来てる気配しないか??」
俺の直感がそう感じた。はっきり見えてる訳でもないが,敵であるコイツが仲間を呼んだとそう感じた。
「私には感じないわ。でももしそうだったらまずいわね……かなり」
「僕がこの場に残って戦うから,お前らは逃げろ! 応援を呼べ!」
「何言ってるのよ。そんな事出来るわけないでしょ!?」
「財前,お前それ本当に言ってるのか!?」
「ああ! 郡司は片腕がないし,攻撃も簡単に捌かれた。笹塚の攻撃もくらってない様子だったし,雄二は経験が浅すぎる。藤井はリーダーとして指揮を執ってもらわないと困る」
「それに多分全員がに逃げてもコイツから逃げる事が出来ないと思う。だから僕が残って戦って逃げる時間を僕が稼ぐ。周りを気遣って戦う余裕がないから,僕が本気で戦うとお前ら全員巻き込む事になるから僕以外は逃げろ!」
「あぁぁぁ!? 私が邪魔だっていうのかこの野郎!!」
「そうだよ郡司! 邪魔だから逃げろって言ってるんだよ! 三年生の救援が来れば僕も逃げるからそれまでの時間を僕が稼ぐ!!」
「だからさっさと行け!!」
「――分かったわ巧くん。ここは巧くんに任せる。私達はすぐに戻って救援の要請をするわ」
「おいおい! 藤井お前正気か? いくら財前だからって仲間を残すなんて出来ないだろ!!」
「巧くんの言う通りこれが最善の策よ。私達が残っても巧くんの足手まといになってしまうわ……」
「ここは任せわ巧くん!! すぐに応援を呼ぶから!」
「さっさと行け! 藤井! 全員連れいていけ。任せたぞ」
「おい財前てめぇー戻ってきたらギッタンギッタンにしてやるからなこの野郎」
「財前……本当に任せて大丈夫なのか?」
「僕は大丈夫だって言ってるだろ雄二!」
財前の事を心配に思ったが,財前ならきっと大丈夫だろうと思った。俺達は財前を残し応援を呼ぶために逃げた。
「恭子,財前一人で大丈夫なのか??」
「雄二くんきっと大丈夫よ。私達も見たことがないけど,巧くんの鉄騎の本気って周りを巻き込むタイプの攻撃みたいだから,普段でも出した事がないみたいなの」
「それってどういう?」
「爆発らしいわよ! とにかく攻撃範囲が広いから普段は使わないって言ってたわ。だけど一体多数とか周りを気にしないなら本気で戦えるみたいだね」
そんな話しをしていると,遠くの方でおびただしい爆音と共に,火の煙が上がっている。きっと財前が戦っているんだろう。
「いま巧くんが戦ってくれてるわね。早く救援を呼びましょう」
「こちらクマさんクラスの05小隊の藤井です。誰か応答願います!」
「山口だ! 藤井か? どうした?」
「山口先生ですか? 問題が発生しました。すぐに救援をお願いします!」
「何?? どうした??」
「私達が任務を終えた後にレベル2の変異種が突然出現しました。交戦しましたが,郡司が乗っていた鉄騎の片腕が負傷,笹塚の遠距離の攻撃も全く歯が立たないAntsybalと遭遇しました。現在財前が一人で交戦しており私達を逃してくれました。すぐに救援をお願いします!」
「分かった。東雲の部隊をすぐに向かわせる。お前達はすぐに街に戻ってこい」
俺たちはそのまま街に戻った。
結界で守られている範囲に到着し一段落する事ができた。
財前の事は気になるが,あの会長の部隊が向かってくれたならきっと大丈夫だろう。
学校の駐屯地まで戻ると,俺達の所に山口先生と冬月大佐が来て,恭子にその時の状況の詳しい話を聞くために恭子を奥の部屋に連れていった。
俺らは案内されたテントの中で恭子と会長達の部隊の帰還を待った。
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