第10話 〜選抜演習②〜

 ゆきとの模擬戦が終わり,鉄騎から降りると財前が目の前にいた。

 「雄二,貴様僕に勝ったくせに他の人に簡単に負けるよ!」

 そう言い放ち,すぐにいなくなった。いちいち面倒くさい奴だな。


 「おう! 雄二模擬戦楽しかったぜ! またやろうな」

 「え……うん」

 

 横に居る和久さんが俺に

 「なんで,透明化とかバリアとか使わなかったんだ!?」

 「あ!! 忘れてました」


 「忘れてたのかよ! まあいいけど,いつでも使えるようにしておいた方がいいぞ」

 「そうですね。実践までには使えるようにしておきます」


 無事に今日一日も終わった。

 クラスに戻り山口先生がHRをする。


 「あ〜昨日撮った集合写真が出来上がったから,皆に渡しておく。それと来週に鉄騎に乗った実践訓練を行う事になった」

 「選抜された生徒が鉄騎に乗り訓練を行ってもらう。呼ばれた五人でチームを組んでもらう」


 「それじゃあ呼ぶぞ! 雄二,巧,恭子,雷斗,恵。この五人で組んでもらう」

 「え〜〜と……リーダーは恭子お前やれ! 後なんだが――」


 「ちょっと待ってください!!」

 そう言って財前が席を立ち上がり山口先生の言葉を遮った。


 「財前なんだ!?」

 「この五人で組めと??? しかもなんでリーダーが僕じゃなく藤井なんですか!?」


 「まずこのメンバーに変更は絶対にない! 冬月大佐と私で決めたメンバーだ。最もベストなメンバーだと私は思う。それにリーダーが藤井なのは,戦術などの集団での戦略,Antsybalへの理解度が一番高いからだ」


 「その面だけ見たら一年生で一番成績が良いのが藤井だし,この五人でリーダー出来るのも藤井しかいないだろ!?」

 「だからってこの五人でやれって!?」

 「いちいち面倒くさい奴だな財前!! とにかく! もう決まったから! 放課後ミーティングでもしとけよ。はい解散」

 

 「おい! さっき言われた四人は僕のところに集まれ!」

 他の四人が財前の所に集まる。


 「財前お前リーダーじゃないだから仕切るなよ! リーダーは藤井だろ!?」

 「なんで僕がリーダーじゃないんだ!」

 「そりゃあ性格だろ!?」


 財前にこんな突っ込む奴がいるのかと驚いた。彼が多分雷斗だろう。となりにいる小さい女の子が恵なんだと思う。


 「私無理です……なんで選ばれちゃったんですか……辞退とか出来ないんですかね?」

 チームとしてやっていけるのだろうか……恭子の方を見ると,何かちょっと考えてる


 「とりあえず,リーダー藤井が何か話してくれよ!」

 「えっ!? そうね! とりあえず自己紹介しましょうか? 雄二くんはちゃんと全員の事知らないと思うから」


 恭子がそう言い,皆で自己紹介をした。財前に臆せずものを言っていた彼は笹塚雷斗ささづからいとという。アイマスクを頭に乗せて選ばれて怠いといいたげな態度をしている。


 もうひとりの女の子が郡司恵ぐんじめぐみと名乗っていた。とにかく怯えているようだった。選ばれた事による不安なのかは分からないが,行きたくない。行きたくない。と呟いていた。


 とても小さい子で身長は150センチ程だろうか。とても同い年とは思えない程幼いといった印象だ。


 一通り自己紹介が終わると恭子が話し始めた。

 「このメンバーは相当クセ者揃いって感じね。大佐と先生の思惑はわからないけど,正直チームワークは別として,瞬間的な強さだったら三年生と引けを取らないと思う」

 

 「それでも僕はこの五人でやれる気がしない!」

 「んな事言ったら,財前と組みたくねえよ!」


 「私はそもそも鉄騎にだって乗りたくありません」

 「メンバーに変更はないって先生言ってたから,とにかくやるしかないわ!」


 「雄二くんはどう??」

 「俺!? ん〜俺も人のこと言える立場じゃないけど,実践訓練までは頑張ってみない? その時の結果で駄目そうだったら先生に文句言えばいいんじゃないかな?」


 「まあそうしてみるか」

 「私は訓練したくないです」


 「僕は認めたわけじゃない」

 「じゃあそういう事でとりあえずは頑張っていきましょう」


 「明日から連携の訓練もしていく事になりそうね」

 「今日からみんなよろしく!」

 「「よろしく」」

 「よろしくおねがいします」


 財前は一人ですぐに出ていってしまった。

 ひとまず解散となった。俺は恭子に少し話を聞いてみた。


 「なあ恭子,チーム大丈夫そうか? 俺は正直全然皆の事知らないから余計だけど,まとまりなさそうじゃないか?」

 「まとまりはないと思うよ! でも大丈夫! ちゃんと強いから!」


 「強いからって……大丈夫かよ……」

 「実践訓練がんばろうね」

 「え,うん……」


 俺達はまとまりなんか全く無い感じでこの場は終わった。

 俺は学校を後にし,寮の部屋に戻ると透が歓迎してくれた。


 「雄二おかえり,お前すげえな! いきなり選ばれて実践って!」

 「喜んでいいのかわからないよ正直」


 「喜んでいいだろ! そんな事よりもし恭子が危なくなりそうだったら頼むぜ!」

 「それってどういう? え? お前透,恭子の事好きなのか!?」


 「馬鹿!! そんなハッキリ言うなよ! まあでもそうなんだよ」

 「だからって言ったって,俺に何か出来るわけでもないだろ」


 「そうなんだけどさ……俺はメンバーに選ばれてる訳じゃないからさ……」

 「メンバーまとめるのも一苦労しそうなメンツだしさ……本当は俺が選ばれて助けてやりたいけど,そうもいかないからさ」

 「そっか……」


 透は前の世界と一緒で恋多きな男で,お人好しらしい。


 「正直手助けになるかどうかも分からないけど,出来るだけ手助けするよ」

 「そうか! ありがとうな。俺はオペレーターに立候補しようと思ってるから」

 

 「告白はまだしてないのか?」

 「してるわけないだろ!!」

 そんな所も本当に俺が居た世界の透と同じだ。


 「俺は応援するよ透! 頑張れよ!」

 「そっか,ありがとう雄二。雄二とは最近会ったばっかりなのに,何故か長い付き合いがあるかのような感じがするんだよな」

 「はははは――俺も一緒だよ!」


 こっちでも透とは親友になれた瞬間だと思った。


 俺達はそのまま食堂に行ってご飯を食べ,部屋に戻る。シャワーにも入り、二人でくつろぐ。


 部屋の窓に近づくと今日も外で訓練してる人がいる。

 「なあ透! 自主練って結構してる人多いの?」

 「え!? 自主練!? いないんじゃないか? そもそも学校の訓練が厳しいからな。上級生ならまだしも俺たち一年生は学校でいっぱいいっぱいじゃないか?」


 「雄二自主練したいのか?」

 「いやいや! 自主練なんてする余力残ってないよ」

 

 「今日はキツかったからなぁ。さっさと寝ようぜ」

 「そうだな。もう寝るか」


 朝になり,支度を済ます。今日は遅刻をせずに学校へ向かう。

 鉄騎に乗る授業の時俺らは五人でチーム戦術を学んだ。五人での戦い方やチームワークを学んでいる……


 だけどこれが困難なんてもんじゃない。バラバラだ!


 クラスメイトの他の五人とチーム戦を行ったが,俺達は選ばれたチームに関わらずボッコボコに負けた……

 皆が皆がバラバラでまとまりが一切ないからだ。俺もチーム戦術なんて分かるはずもく,恭子がかなりの戦術を考案してくれたが,一瞬でそんな作戦なんか意味がなかった。


 放課後俺らはまた集まった……。

 財前が真っ先に発言をした。


 「このチームで戦闘なんて僕には無理だ! こんなに協調性がなかったら無理だ」

 「財前お前だって人の事言えないだろ」

 「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいです」


 「バラバラ過ぎだろ〜……」

 「雄二,貴様も全然動けてないからな! むしろお前が一番出来てない」


 「そんな事言われたって,戦術なんて言われても知らないんだから仕方ないだろ」

 「すぐに出来るわけないし,さらに皆全然違う動きするんだからそりゃあテンパるわ!」

 「なぁ!! リーダーの藤井は今日やってみてどう思ったんだ??」

 

 「そうね……びっくりするぐらいバラバラだったね!!」

 そういい何故か恭子は笑い出した。


 「ごめん,ごめん,まさかこんなに協調性がないとは思わなかったからさ!」

 「今日一日皆の動きなどを見て思ったけど,これがベストだと思うフォーメーションがあるんだけど,一回試してみない?」


 「藤井それはどんなのだ?」


 「雷斗くん,雄二くん,恵ちゃんの三人が各々好きに戦ってもらって,その後ろで財前くんと私でフォローするフォーメーションが一番いいと思うの!」

 「なに!? 僕がこいつらのフォローをするのか!?」


 「お! それはいいじゃんか! 俺は別にいいぜ!」

 「私は鉄騎に乗りたくありません……」


 「恭子に聞くけど,どうしてなの? 財前って正直強いと思うし,前で戦ってもらった方がいいとは思うんだけど?」

 「私も最初はそう思ったんだけど,やっぱり巧くんってめちゃくちゃ優秀なのよ! 接近戦でも,中距離,長距離でも何でもこなす事が出来るし,頭もキレるし。このチームをフォロー出来るのはむしろ巧くんしかいないと思う」

 

 「雄二くんは初めて乗った鉄騎で財前くんに勝つ位の適合率の持ち主よ! チームになると遠慮してるようだから,むしろ前に出して好きなように戦ってもらった方がいいと思うの。そして雄二くん,雷斗くん,恵ちゃんの戦ってる三人をそれぞれフォロー出来るのって,全てが突出してる巧くんにしか出来ないと思う」


 「私は巧くんがフォローに回れない部分などに回る立ち回りが一番いいと思うんだけど……どうかな??」


 「俺はいいと思うぜ!」

 雷斗が賛成する。


 「私は……ごめんなさい……ごめんなさい」

 「僕は絶対に嫌だ! なんで僕が全員のフォローしないといけないんだ」


 「一回試しにやってみない!? どっちみち今のままじゃあ駄目なんだから、恭子の提案が駄目だったら、次は財前の提案を聞くってのでいいと思うんだけど!」

 俺はそう言った。


  「――。一回だけ一回だけだぞ!?」


 「じゃあちょっと今から訓練場借りてちょっと練習していかない!?」

 「五人いないと訓練にならないから、だから今から行かないかな?」

 

 「実践まで時間ないしなぁ~まあ俺はいいけど」

 「私は嫌ですぅ~…………」

 「じゃあ決まりね行くわよ! ほら恵ちゃんも行くわよ!」


 俺たちはそのまま鉄騎のある駐騎場へ向かい、訓練をする事になった。

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