姉さんの無茶ぶり
「なんかさぁ、お菓子食べたくない?」
土曜日の昼ご飯時、姉さんの部活が休みで家にいる日にご飯を一緒に食べていると突然姉さんがそんなことを言ってきた。
「お菓子?」
「なんか体が甘いものを欲している感じがしてるの」
後片づけがめんどくさくていつもはやらないが言われた瞬間に俺も甘いものが欲しくなってきたので久しぶりに何か作ることにする。
「何がいいの?」
「プリンとか」
冷蔵庫の中を見てみると、卵は買ってきた分が余ってるし砂糖も余裕があったので今から作って晩御飯の時に一緒に食べることにしたが、姉さんのためだけに作るのは気分が乗りきらない俺はあることを思いついた。
「今から作るんだけど、咲さんってプリン好き?」
「えっとねぇ、好きだったと思う」
「わかった~」
ピーピー、とオーブンのタイマーが切れる音がしたので中に入れていた生地を取り出してみるとちょうどいいくらいに固まっていそうなのがわかった。久しぶりだったし失敗と成功の確率本当に半々だったと思う。
まだ肌寒いこの季節にもかかわらずリビングのソファーで毛布も掛けずに昼寝している姉さんに毛布を掛け、できたプリンを冷蔵庫で冷やしてから俺も少し昼寝をすることにした。
目が覚めたのは大体五時くらいだった。さっきまでの眠気もすっかり取れ、疲れが取れたのが目に見えてわかる。
姉さんはまだ寝ているようなのでそこは放っておいて晩御飯を作り始めた。
「うーん…!あぁよく寝たぁ~」
キッチンで味噌汁を作っていると後ろの方で姉さんが起きたようだ。
「姉さん、咲さん呼んできて」
「えぇ?あ、もう時間か…」
俺が昨日急に「明日、咲と食べるから」と言って来たから、急遽多めにご飯を作っているのだから呼びに行ってくれてもいいのでは、と思った俺は姉さんに命令を下した。
「こんばんは~」
「こんばんは。咲さん」
玄関から、咲さんが入ってきたので料理をテーブルの上にモノによっては温めなおしてから並べていく。
「「「いただきます」」」
ある程度ご飯を食べ進めたとき、意を決して咲さんに例のことについて聞いてみることにした。
「咲さん、姉さんに先週聞いたんですけど姉さんが男装したって本当ですか??」
「ええ、翠話したんだ?」
「前、言ったでしょ?学校に来てない部活の子の家に行くって。その時にぽろっと言っちゃった」
「あぁ~言ってたねそういえば。それ解決したの?」
「えっとね………」
そこから先週の話をざっくりと説明していくと、咲さんは例の噂について少し聞き覚えがあったようでそこに大きく反応していたり、多少起こっている様子が見えたりもしたが、最終的な解決案などは笑いながら聞いていた。
「なるほどね、状況聞けば聞くほどそっくりだね」
「だよね~……」
咲さんは笑いながら、姉さんは本当に面倒くさかったとでも言いたげな感じでそのことについて話していた。
「そこのところ気になるんですけどその時ってどういう状況……?」
「はい!もう終わり!!咲も言っちゃダメ!!!」
「はいはい、わかったってば」
残念ながら今日のところは引き下がるしかないようだ。またどこかで咲さんと二人の時にでも聞くことにしよう。
「甘いもの食べたい!蒼汰もってきて!」
もう少し後からにしようと思っていたけど、ご機嫌斜めな姉さんの前に冷蔵庫からプリンを出してスプーンと一緒に献上した。
「うわ~これ蒼汰君が作ったの?」
「そうですよ。今日のはもしかしたらミスってるかもしれないんですけど味は問題ないと思いますよ」
結構な自信作だった今回のものを咲さんに食べてほしかったのでわかりやすく自信ありげにそう答えた。
「翠~私の分も分けて~」
そこからはとても速かった。
咲さんが作った分の半分を食べてもう半分を姉さんが食べ切ったからか、少なめに作ったのにも理由があるのかもしれないけど、それでも信じられないスピードでプリンがなくなっていった。
二人は本当においしそうに食べてくれたのでうれしいことには変わりないが、本音を言うなら俺もちょっと食べたかったなぁ~。
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