姉side(土曜日)
「……じゃあ、みんな休憩してね」
私は一応顧問という立場にいるが、ほとんどは外部のコーチやもう一人のベテランの先生がしてくれている。なのでやることと言えば土日やその先生がいないときでみんながケガをしたときに病院に連れていくくらいだった。
今日の練習は一日あるため、キリのいいところを見計らって私は休憩に入るように呼び掛けた。
「う~ん、まだかな…」
お昼の時間になっても蒼汰が届けてくれるはずのお弁当が届いていないのを気にしていると、この頃話しかけてくれるようになった生徒の一人が声をかけてきてくれた。
「翠先生、いっしょにご飯食べませんか?」
「ごめんね。今日お弁当忘れてきちゃっててさ、持ってきてってお願いしたんだけど忘れてるみたいなんだよね」
「え、そうなんですか…。なら私たちのちょっとずつ食べます?先生午後からの練習参加してくれるって聞いたんで食べないと倒れちゃいますよ」
「でも、皆のほうが持たなくなっちゃたら大変だから私はいいかな」
朝ごはんも食べていない状態で空腹がピークに達した今にもなってしまいそうなお腹に力を入れながら私がそう答えていると、一年生が外のランニングから帰ってきたのが見えた。
一旦、話しかけてきてくれた青井さんから離れて一年生の子達にも同じように休憩に入るように伝えると、一人だけ休憩に向かわずにこっちの方に近づいてきた子がいた。
「あの…翠先生、さっき外のランニング中にこれ、渡されたんですけど…」
一年生の子がそう言って渡してきたのはいつも仕事で私が使っている鞄だった。
「蒼汰、届けてくれたんだ。ありがと、白沢さん」
「あ、先生それお弁当ですよね!一緒に食べましょ!」
後ろにはさっきまで話していた青井さんが他の子と一緒に私の手に持っているものを見つめていた。
「いま、白沢さんが届けてくれたの。一緒にご飯食べよっか。」
「え、それ先生の弟さんが作ってるんですか?!」
「いいな~、私もそんな弟が欲しかった……!」
「最近、というか今年度が始まったときくらいからかな~」
青井さんたちは私の弁当箱の中を見て興味を持ったのかそのことについて詳しく聞いてきた。土曜日のお弁当はいつも金曜日の夜ご飯の残りを入れてくれるので蒼汰曰く、「楽してる」ということらしいがおいしいのには間違いないので文句はない。
「みんなは自分で作ってるの?」
「私はそうですー」
「私も~」
「私だけ…?」
そんな感じでみんなと話していると、あっという間に昼休憩の時間が終わった。三年生がリーダーシップを発揮して後輩たちを先導していくのを見て自分も頑張ろうという気になった。
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