土曜日の仕事


 土曜日の朝、いつもより少し遅い時間に起きた俺は習慣になってきた姉さんの昼ご飯を作っていく。

 

「まあ、これでいっか」


 個人的に納得がいかない卵焼きだが時間もないのでうまく弁当箱に詰める。それからアラームが鳴っているのに寝続けている姉さんを起こすと、寝すぎたことに気づいたのか飛び上がって俺がいるのに気にせずに着替えを始めたので後ろを向いて部屋を出ていった。


「姉さん、テーブルの上に置いといたから」

 

「ありがと!いってきます!」


「いってらっしゃい」


 玄関で姉さんを見送ってから洗面所で朝のルーティーンをしてから、リビングに戻るとテーブルにさっき置いたままの状態で弁当箱があった。それを見て今なら間に合うかとも思ったが、前の道路をバスが走っていくのが見えたため、もし姉さんから連絡からきたら行くことにした。

 


 10時になり、昼ご飯に今までに作ったことのないものでも作ってみようかと思い、スマホで動画サイトを眺めていると着信音とともに画面にメールが表示されたのでアプリを開くと本文には『ご飯、忘れたから持ってきて。』と書かれていた。

 

「…行くか」


 一瞬、心の中で行きたくない気持ちが上にきたが、昨日怒られたことが後ろめたく感じた俺は寝間着から制服に着替え、姉さんの学校に向かった。





「う~ん、これ……どうやって行ったらいいんだ?」


 家から自分の高校とは逆方向のバスに乗って二十分くらいで姉さんの勤めている学校に着くことはできたのだが、敷地が広すぎるがゆえに地図を見てもどうすれば体育館に行けるのかが全く分からなかった。

 そこで姉さんにこっちまで来てもらおうと電話をかけるために携帯を取り出すと、それは着信をかけた瞬間に暗い画面へと切り替わった。


「マジか……」


 暗いままの携帯を眺めながら帰ることを視野に入れて考えていると、後ろから部活のウインドブレーカーを着た生徒に声をかけられた。


「あの……大丈夫ですか?」


「他校の生徒さんですよね?もしよかったら案内します」


部活中っぽい雰囲気がしていたので申し訳ないが、誰かに聞かないとどうしようもなさそうだったのでその人に聞くことにする。


「…すいません、お願いします。女子バスケ部に用があって…」


「女バスですか?」


「はい、これを届けに来たんですけど…」


 そこで俺は弁当の入った、姉さんがいつも仕事で使っているかばんごとその人に見せた。

 

「見たことないやつってことは1年生のかな…」


「私、一応女バスなんです。この学校体育館行くまで結構時間かかるんで私が届けましょうか?」


 そう言われ、あまり遅くなるとそれはそれで姉さんの昼休憩が終わってしまうような気がした俺はその人にかばんを預けた。


「……お願いします」


「はい、任せてください」


 中身は弁当ということを伝えると、その人はかばんを持ってるとは思えない速さで体育館があると思われる方向に走り去っていった。


「速…」






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