家での一幕
雪さんと別れた後、ちらっとスマホを開いてホーム画面に表示されている時計を見てみるとまだ時間は五時にはなっていなかった。疲れの感じからなんとなく急いで帰って晩御飯を作らないと、と思っていたがゆっくりいろいろしても大丈夫そうだった。
家に帰って、重たい教科書類を置いてひと段落した後に冷蔵庫の中身を見てみると最近買い物に行ってなかっただけあって中に晩御飯の主役になりそうなものは何もなかったので歩いていける距離にあるスーパーに買い物に行くことにして、制服を着たまま買うものを携帯にメモしていると姉さんからメールが来た。内容は『魚が食べたい』と短く書かれているだがちょうど悩んではいたのでこれ幸いと俺は晩御飯の食材を買いに行った。
スーパーは時間的に社会人より主婦の方々や高齢の人が多く、最近では何人かの人に顔を覚えられている。俺はいつもの人たちに一通り話しかけられた後、家に帰ってからお米を炊いたり、洗い物を片づけたりしていると姉さんが帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま~あぁ~疲れた~」
「今日何か特別なことでもあった?」
「うちの学校、今日入学式でそのうえ入学式の片づけを手伝わないといけなくて。咲と一緒に死にそうになりながらやってきたの」
まだお酒のことはよく知らないがあれだけの缶を空にしておいて今日が入学式だったという事実に俺は驚きを隠せなかった。
「咲さん、二日酔いとか大丈夫そうだった?」
「ああ見えても、咲二日酔いとかならないし朝とかもちゃんと起きれてたでしょ?というかそんなことよりさっさとご飯食べたい~」
「もうそろそろできるからそこらへんで待ってて」
「わかったー」
二人分のご飯をよそってテーブルの前で待ち構えている姉さんと自分の前に置き、ご飯を食べ始める。
「おいしい!」
そういいながら、姉さんはどんどん口にご飯を運んでいく。いつも見ていて思うがこんなにも食べて太らないのはどういう理由なのだろうか。
「そういえばさ、なんか蒼汰疲れてない?」
先にご飯を食べ終えてテレビを見ていた姉さんが突然そんなことを言ってきた。
「あぁ、今日学校でさ……」
今日のあの演奏のことについて詳しく話していくとあの光景がより鮮明に浮かび上がってきて話しているうちに熱が上がってきたからか、急に姉さんにストップをかけられた。
「わかったわかった。それをみて、蒼汰は軽音楽部に入るの?」
「いや、入るとかはないと思う。他の部活には一応はいるつもりだけどバイトとかもしたいし」
俺がそう言うと、姉さんが一瞬驚いたような表情を見せたような気がした。
「へえ、バイト。そういえばバイトできるんだっけ?」
「まだ何にも決めてないけど」
「喫茶店とかにしたら?ここら辺って忙しすぎたりとかもしないからいいと思うけど。というか私がやったことあるのがそれだけっていうのもあるけど」
「ここら辺に住んでる人っていい人多いしそうしようかな」
「あ、お風呂沸いた。行く?」
「いいよ、先行って」
「りょーかい。んじゃ、お先に」
姉さんは自分の棚から服を持って風呂場へ歩いていき、俺は支配者のいなくなったソファーの上で姉さんと同じような体制でぐったりと横になると、自然と瞼が落ちていった。
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