高校生活初日 2
朝のホームルームが終わり、先生の指示を聞いてから俺は雪さんと二人で体育館に向かい、舞台から結構後ろの方の席に二人で座って開会を待った。
「それでは、今からオリエンテーションを開始いたします。まず初めに校長先生からの挨拶です」
司会の生徒のアナウンスに合わせて校長先生が壇上に上がった。
「え~皆さん、…………」
「校長先生、ありがとうございました。続いて生徒会長の挨拶です」
「おはよう、みんな。私に負けないほどの輝いている君たちの目が今日もまぶしい。………」
「~!!生徒会長、ありがとうございました」
司会の人は生徒会長にきらきらとした眼差しを向けているのが顔を見ずとも、伝わってくる。やっと次から始めるのか、と椅子に座りなおしていると雪さんが肩をトントンと叩いてきた。
「あれ、もしかして毎回?」
「……もしかするともしかするかも」
「きっつ……いかも……」
雪さんはこれからの学校行事に対して俺と同じ感情を抱いているようだった。
「前のほうから資料を配っているので一人一束受け取って後ろに回してください」
「すごく厚いね」
先に受け取った雪さんの資料を見るとパンフレットぐらいの厚さがあった。
「これからの学年行事について説明していこうと思います。まずはおおまかに一年間の流れを説明していきます。直近の行事としては一泊二日の交流行事があり、一学期はほかに文化祭があります。この二つは多くの三年生から高校生活の中で印象に残っていると言われる行事でこの二つは楽しみにしておいてください」
この学校に進学すると決まったときに色々調べてみたがこの林間学校についてはほとんど情報が載っていなかった。だから俺はどちらかというとこの行事を心配していたが、先生の自信の感じを見るに相当楽しいイベントのように思われるのでたくさん知り合いができると思うと今から楽しみになった。
「二学期は球技大会や体育祭があり、運動部に入る人はこの中に多くいると思うのですがここで好きな人にアピールしたりできて、毎年いろんな場所で告白している現場を目にします。巡回をしている先生は独身の人も多いので本当の本当にこっそりとするようにお願いします……!」
「「……w」」
先生が集まって座っているほうを見ると大きくうなずく人と、笑いをこらえる人など教師の中でもいろいろあるようだった。
「冬休み明けの三学期には一、二年生のみ参加のマラソン大会があります。二年生の話にはなりますが夏に臨海学校、冬に北海道で修学旅行があります」
「では、最初に交流行事のことについて説明していきます。今年の交流行事では山の中にあるキャンプ場でキャンプをしてもらおうと考えています」
「「おお~」」
喜びの混じった声が会場のあちらこちらから聞こえてくる。
「大体は皆さんが思っているキャンプですが、三百人の新入生を一か所はできないので二か所に分かれて、事前に決めてもらったその班で色々としてもらいます」
自由に、ということは雪さんと組むことができそうなので俺はこういう時に現れてしまう余った一人、になることはなさそうなので安心することができた。
「班決め……」
心配そうに雪さんはそうつぶやいた。
「俺と、班一緒に組んでくれない?」
「うん…!」
「よかったぁ。この学校にいる友達って雪さんだけだからもし断られたらあまりになるところだったんだ」
「ともだち……」
小さく雪さんの口から発せられたその言葉はやけにはっきりと俺の耳に届いた。
それから一時間半ほど一つずつの行事に関して概要を説明されていった後に二十分ほど休憩の時間が与えられ、俺は雪さんとさっきの会話の続きを話していた。
「……部活に入ったら、二、三人くらい知り合いできると思うんだけど」
「そんなことない。蒼汰君だけ」
「まあ、そこは俺が何とかするよ。もしかしたらバイト先でできるかもしれないし」
「蒼汰君、バイトするの?」
「その予定だけど、雪さんはしないの?」
「うん、接客とか無理……」
「でも、接客以外もあるだろうし…」
俺がそう言いかけたとき、司会の生徒からオリエンテーションの再開が伝えられ、唐突にそれは始まった。
「では、今から部活動紹介を始めます。資料などは教室で配布するのでこれからの時間は気になる部活を見つけてみてください。一つの部活につき一分なので見逃さないように!」
「まずは、野球部からです」
そのアナウンスで舞台袖からユニフォームを着ただけの野球部が手ぶらで現れた。
「俺たち、野球部は二、三年生合計で三十人、マネージャー一人で活動しています。俺たちは勝利よりも彼女、練習は持てるための特訓と信じて今までやってきて、昨年甲子園に出場するまでに至りました。新入生の皆さん、奮ってご参加ください」
とりあえず運動部にはいくつもりがないのでほとんどを聞き流して文化部の時間まで休憩を再開することにした。
「ここからは文科系の部活、並びに同好会の紹介に入りたいと思います。まずは文芸部から」
「こんにちは、文芸部の部長をやっている青野、と言います。この部では週に二回ほど好きな本について語り合ったり、実際に本を書いたりして部誌を発行したりしています。漫画や小説などいろんな本好きがいるので、ぜひ遊びに来てください」
文芸部の部長さんはザ・文学少女という感じのおとなしそうな女の人で、個人的に小説より漫画が好きなので文芸部はあまりかなと思っていたが一回行ってみてもいいと思った。
「雪さん、文芸部ってどう?」
「私はあんまりかも。本、あんまり読まないから」
「俺、一回行ってみたいんだけど一緒に行かない?」
「いってもいいけど行きたいとこにとこにもついてきてほしい」
「もちろん」
「続いては百人一首部です」
「私たち……」
ピンとくるものがない、いくつかの部活が続いた後、同好会の紹介に入っていった。
「私たち、ゲーム同好会はやりたい人が部室に集まってボードゲームをしたり、ボイスチャットを使って家でPCゲームをしたりもしています。普段は不定期開催だけど、今週は毎日部室を開けるのでみんな来てね~」
「蒼汰君、私あそこに行くからついてきて」
「ゲーム好きなの?」
「うん、すごく」
見た目からの判断にはなるがどちらかというとぬいぐるみやかわいい系の服が好きそうだと思っていた雪さんがゲームが好きなのはすこし意外だった。
「昨日、言わなかった?」
昨日の朝、バスの音でほとんど聞こえていなかったが何を言っていたのか今知った俺は少しはぐらかしながらその場を切り抜けることにした。
「言ってなかったと思うけど…。あっ、なんか始まるみたい」
舞台上ではドラムやコードにつながれている音響機材などが次々とセットされていって、それが終わると朝にみた先輩と生徒会長が現れた。
「これで、最後の紹介です。軽音部の方々に一曲披露していただきます!」
「行くぞ!!」
その瞬間、会場の雰囲気が変わるのがわかった。疲れた雰囲気やマイナスな気持ちが吹き飛んでいくようなそんな声で歌う生徒会長がこの時だけはとてもかっこよく見えて、一曲が終わり、アンコールの二曲目が終わり舞台からその人たちが下りてからも会場の熱気が収まることはない様子を見て、あの生徒会長のすごさを知った。
教室に戻り、教科書の販売にそこそこの時間を取られながらも雪さんと同じバスに乗って家に帰っていった。
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林間学校を交流行事に変更しました。
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