引っ越し初日
姉さんが急に家に帰ってきて、引っ越し先が決まった日から二週間が経ち、俺は荷物より一足先にこれから三年間住むマンションに到着したので姉さんにメールを送って迎えを待っていると、五分もすると姉さんがマンションの入り口から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おはよ、蒼汰。こっちから入れるから覚えておいて。後でカギは渡すから」
「おっけー」
一通り、この家のことについて覚えておいていたほうがいいことを部屋に着くまでの間に教えてもらいながら歩いていると前から歩いてきた大学生くらいの俺から見ると少し大人っぽい人が姉さんに話しかけてきた。
「おはよう、翠。この子が翠の弟?」
「そうだよ、咲。蒼汰っていうの」
「はじめまして、柳 蒼汰です。今日から翠の家に住むことになりました」
「ちょっと前にそのことを聞いたから今から手伝いに行こうと思ってたの。翠とは大学からだから結構長い付き合いになるかな。私のことは咲さんって呼んでね。」
「あ、そうなんですか。これからよろしくお願いします、咲さん。俺の荷物そんなに
ないんでそんなに時間はかからないと思います」
俺がそう言うと急に咲さんの顔が曇ったような気がした。
「あ、もしかして蒼汰君って翠の部屋に来たことな
「?はい、ないですけど……」
「あぁ~うんっとね……」
「まあまあ、そんなことはいいじゃん!とりあえず行こ!」
エレベーターに乗り、急かす姉さんに連れられ三人でこれから我が家となる予定の家に向かう。
「はい、ここが私の家」
玄関の前に着き、ドアを開けようとするがなんだか緊張したので一度深呼吸を挟む。そうして気分を整えて、いざ開けようとドアノブに手をかけようとすると横から姉さんの手が伸びてきてガチャリとドアを開けた。
「ほら、さっさと入って入って」
その次の瞬間、俺の中に浮かんできたのはその行為を行った姉さんへの感情ではなく部屋の中の光景についての驚愕だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます