お願いします・・・・・・
「私の家に来ない?」
俺が言葉を発さないでいると母さんが口を開いた。
「翠、あなたの家って蒼汰の学校から結構遠くなかったっけ?私としては誰かが一緒に住んでいてくれるのはすごくうれしいけど、そこまでして蒼汰に負担はかけたくはないかな」
なんとなく言われたことを理解し、落ち着きを取り戻した俺は姉さんにいったん質問することにした。
「母さんの言う通り、姉さんって結構遠いとこに住んでたよね?」
「そうだったんだけど、ついこないださっき見してくれたマンションの近くに引っ越したんだよ。で、その報告と前の家に持っていけなかった本とかを取りに来るために今日戻ってきたってわけ」
さっきの発言について何の考えもなしに言ったことではないと分かった後、よくよくこの提案について考えてみると、姉さんと生活することで得られる利益は数多くある。まず金銭面、ただでさえ私立に行くというのにそのうえ一人暮らしとなると心が痛むが、そこが改善することができるのがとてもいい。次に利便性。仮に姉さんの家に住むということが決まった場合、近くに大きな駅があるためバイトなどがとてもしやすい。
「俺や母さんとしてはそれが安心できるんだけど実際に住むのは蒼汰だからそうするかはよく考えてからな」
「う~ん、姉さんは本当に俺が住んでも大丈夫なの? もしなんか不都合とかがあるようだったらやめとくけど」
「え、何? 私がいいって言ってるんだから問題ないに決まってるでしょ」
「あ、はい」
そして、デメリットについて。姉さんの家に住む=姉さんの下につくという形が本当にまずく、昔から何かとしてきた身としてはこのヤバさが体にしみこんでいる。次にプライベート。俺は男子高校生であり、何かとそれが必要な年ごろである。
「う~ん?」
うんうん、腕を組んでうなりながら考え続けた結果心の中の天秤が住まないのほうに傾き始めたとき姉さんが話しかけてきた。
「そんなに私に気を使わなくてもいいって!」
「蒼汰。別に家族に頼ることは恥ずかしいことじゃないんだからここは甘えときなさい」
この二人には俺がどう映っているのだろうか? 不思議なほどあった呼吸で『NO』が言えない雰囲気が作られていく。
「あ……はい。じゃあそうし、よ、うかな……」
こうして俺の高校生活に向けての準備が終了した。
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