日常
午後四時、高校の課題をやり終えた俺がぼーっとスマホを眺めていると同居している姉から『八時くらいに帰る。肉がいい』といつものように短く簡潔な文章が送られてきた。スマホを置いて冷蔵庫の中に豚肉とショウガが残っているのを確認し、炊飯器をセットしてからまたソファーでの暇つぶしを再開した。
「……ぇ。…ねえ、起きてって」
「……ぅん?」
いつの間にか眠ってしまったようで手元に落ちていたスマホの画面を見てみるとホーム画面には19:00と表示されており、そして隣にはスーツ姿の姉の翠が立っていた。
「早くご飯作って!! お腹空いた!」
「わかったわかった」
ここで「八時になってからでいいじゃん」などと言うと余計に面倒なことになることを半年間の経験から学んだ俺は黙ってぼやけた視界のままキッチンへと移動した。
「今日の晩御飯って何?」
「生姜焼き」
「お昼何してたの?」
「課題」
「へぇ~……」
二十分後、先にテーブルの上に着席している翠の前に完成した料理を机の上に並べてから寝ていたせいであまりお腹が空いていなかった自分の分にラップをかけているとインターホンが鳴った。
「あ、多分咲」
「え、今日来るって言ってなかったじゃん」
「ごめ~ん」
玄関を開けると、そこに翠の同僚の咲さんが立っていた。
「ごめんね、今日も来ちゃって」
「別に大丈夫ですよ気にしなくて」
咲さんは玄関に置かれている来客用のスリッパの横にある自分のスリッパをはいてテーブルに座った。姉さんはもう食べ終わったのかソファーでいつも通り着替えもせずにシャツのまま漫画を読んでいる。
「これ、どうぞ。今作ったやつなんでまだあったかいと思います」
そういってさっきラップをかけた自分用に置いておいた食事を出すと、翠と同じくよほどお腹が空いていたのかものの数分で料理がなくなった。
「今日もおいしかったよ蒼汰君。、ご馳走様。洗い物私もするよ」
「お願いします」
俺と咲さんは少し広めの我が家のキッチンで二人並んで食器を片していった。
「じゃ、またね」
三人で並んで録画していたテレビ番組を見たりした後俺はわが家があるマンションの別の階に帰っていく咲さんを見送ってから、依然としてリビングから動かない翠に声をかけた。
「咲さんが来るときは連絡してくれって何回も言ってるだろ」
「いや~忘れてた。次は気を付けるから許して、ね?明日の帰りに甘いものなんか買ってくるからさ、うちの学校の近くのお菓子屋で」
「……次はちゃんと言えよ」
俺が欲しいものを的確についてくるそんな姉さんが意外と嫌いじゃないのだった。
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