プロローグ

居合の神と呼ばれた男

 さむらいの国、日ノ本。


 平安の末期から多くの侍が生まれ、刀を帯び、江戸幕府の支配が終わるまで、彼らはこの国の『武』そのものと言える存在だった。


 そしていつの世も剣の達人と言わしめる侍が現れた。


 剣を操る、ただそれを極めるために肉体を鍛え、技を磨き、極限まで己の人生を削ぎ落した狂信者たちだ。



 ーーーでは、ここで問う。

 

 日本史上最強の剣士とは、誰だろう。



 京の都を震え上がらせた武蔵坊弁慶むさしぼうべんけいを倒し、平家を滅ぼした英雄、源義経みなもとのよしつねか。


 天皇と足利将軍より「天下一」と呼ばれた戦国時代の剣聖、上泉信綱かみいずみのぶつなか。


 上泉信綱と双璧をなし、三十九年もの間、無敗無傷で戦国時代を駆け抜けた伝説、塚原卜伝つかはらぼくでんか。


 巌流島がんりゅうじまの決戦を制し、多くの死闘を勝ち抜いた二刀流の怪物、宮本武蔵みやもとむさしか。


 江戸時代にて最大最強の派閥はばつとなった柳生新陰流やぎゅうしんかげりゅうの開祖、柳生石舟斎やぎゅうせきしゅうさいか。


 現代剣道の生みの親である千葉周作に「生涯、かなわぬ」と言わしめた、音無し剣の天才、高柳又四郎たかやなぎまたしろうか。



 ーーー否。もう一人、いる。



 もはや伝説と呼ばれる、これらの剣士たちにも負けぬ異端の剣豪が、ただ一人。


 その者の名は、林崎甚助はやしざきじんすけ



 背丈はたったの五尺(151.5cm)でありながら、彼の愛刀は非常に長く、なんと刃の部分で三尺二寸三分(100cm)もある大太刀おおだちであった。


 小柄な体に、左腰には長大な刀。

 

 あまりに釣り合わぬ、ひどく不格好な姿。


 そして、彼は天才とはほど遠い、剣の凡才であった。



 しかし彼は父のかたきを討つために、ただひたすらに、一芸を極める修行を断行した。寝食を惜しみ、無我夢中で剣を振り、己を死のふちまで追い込んだ。



 そして、少年は『殺人剣』を編み出した。


 凡才、林崎甚助はやしざきじんすけが極めたのは、恐るべき人斬りの秘術。


 居合術いあいじゅつ、である。



 やがて彼は父のかたきを討った。己は傷すら負わず、たった一瞬で、殺した。


 それから誰が言ったか、林崎甚助はやしざきじんすけのことを噂する者は、決まって最後に一つだけ、こう付け加える。



「決して、林崎はやしざきとは立ち会うな。やつの刃は見えやしない」



 時の剣豪でさえも、彼には決して真剣勝負を挑まなかった。


 力、技、駆け引き……あらゆるものが、彼の前では意味をさない。


 目にも止まらぬ神速の抜刀ばっとうを、誰が防ぐことができようか。



 ーーーいわく、居合の神。そして、人斬り。



 それが林崎甚助はやしざきじんすけ、という剣士である。



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 異世界ジャンル初投稿です!


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 では、引き続き今作をお楽しみください!!

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