3月第2週 熱きモノ

『ロジャー グラート カヴァ ロゼ ブリュット

 2021

 ロジャーグラート』


 スペイン・ペネデス地方、バルセロナ近郊に位置し、シャンパーニュと同じく伝統的製法で造り出されるスパークリングワイン・カヴァの産地である。

 今回のロジャー・グラートは1882年創業と歴史は古く、長期熟成を行うことによって味わいに深みを持たせるなどのこだわりもあるらしい。


 それならばすぐに開けてみようじゃないか。


 一瞬、ドン・ペリニヨンのようなラベルデザインに見えたが、見比べると違っていた。

 そんな勘違いをしたがグラスに注ぐ。

 

 やや褐色気味ではあるが勢いのよい泡が立ち上る。

 酸味の効いたイチゴのような赤い果実の風味と味わい、スッキリとした酸味と切れ味の良い泡が心地よい。


『オードブル盛り合わせ』


 今回のオードブルはちょいと贅沢にいってみよう。


 クラッカーにクリームチーズを塗り、その上にそれぞれ生ハム、ナッツたち、生サーモン、いくらと乗せていく。

 彩りでミニトマトも添えてみた。


 さらに、それぞれに味付けもしてみる。


 生ハムに粉パセリを振りかけ、ナッツとサーモンには塩とオリーブオイルで味付け、いくらは醤油漬けだ。


 では、実食。


 塩とオリーブオイルは当然ながらクリームチーズとよく合う。

 サーモンとナッツとも相性は良い。


 いくらの醤油漬けとクリームチーズ、醤油はどんなものと合わせても大概合うものでクリームチーズのまろやかさと魚卵に深みが増す。

 生ハムの塩味も食欲を増幅させる。


 そして、ワインと合わせる。


 流石はカヴァ、炭酸をまとったロゼはどんな料理にも飲みやすく万能の相性の良さがある。

 幅広くどんな相手とでも付き合えるパリピなのだ。


 特にめでたいことは何もなかったが、ちょっとしたパーティーを独りでやってみた。

 存分に飲み食いし、気が付けばうたた寝をしてしまう。


☆☆☆ 


 暦の上では春となったが、これまでが嘘のように雪がよく降る。

 しかし、気温だけは高くなっているのですぐに雪は溶けていく。

 

 気分だけでも春を味わいたいものだ、色々な意味で。


 さて、この週は一体何をやったのだろうかと振り返る。


 意外にも毎日のように雪が振るため、新しい畑ではやれる作業が無い。

 すでに植わっているブドウ畑に出て、巻きヒゲを全て取り終わり、ブドウ棚の上は

キレイにし終わった。


 他にあった出来事といえばこれに尽きるだろう。

 北海道・余市のワイナリー・ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦氏が市主催のセミナーでやってきたことだろう。


 日本ワイン業界においてはほぼ誰もが知っている有名人であり、日本でも最も手に入れにくいワインを生産している。  

 この部分だけを切り取れば、気難しい人物のように思えるが、実際には気さくで陽気なオッチャンという印象であった。

 

 話の内容としてもワインへの情熱や思想、ワイン産地としてのあり方、誰でもできるワイン造りを実践し次世代へと継承していくこと。

 他にも様々な話があったが、実質的にはそのような話であった。


 ワインというものは難しいと思い込まれているが、実際にはそれぞれ好きなように楽しむものであることには僕も同感である。

 マニュアル通りのものではなく、それぞれの土地の個性を活かしていくことは、ワインに限らないのではないだろうか?


 ワイン造りは農業が基礎であり、大変であってもそれ自体を楽しむこと。

 世の中が暗かろうが先行きが不透明であろうが、そんなものはくだらない言い訳に過ぎない。

 如何に阿呆になって今を突き進むことが大事なのだろうかと思う。


 次の世代も受け継ごうと意欲的になるように礎を築くこと、それが産地となり文化となっていく。

 ワインを一過性のブームで終わらせないこと、それが最大の課題ではないだろうかと僕は思う。


 そのような話の後には、懇親会という名の宴会、大人数の参加であったため盛り上がりはしたが参加者全員を把握はできないほどであった。

 その後もさらに店を変えて夜は更けていった。


 そして、僕もまた自分の望むワインを造る。

 熱きモノを滾らせ、春の訪れを感じ始めていた。

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