12月第5週 年越しに向けて

『ジョージア サン ルカツィテリ ムツヴァネ

 2018

 ヴァジスバニ エステイト』


 世界最古のワイン産地ジョージア、この地で19世紀にワイン造りとブドウ栽培を趣味(!?)としていたジョージアの貴族によって造られたシャトーを2013年に実業家たちが蘇らせた。

 伝統製法と近代技術を融合させながらジョージアの特徴あるワインを造り出しているという。


 今回の1本は、ルカツィテリとムツヴァネ・カフリというジョージアの地ブドウをブレンドして造られたオレンジワインだ。


 グラスに早速開けてみる。


 オレンジを最早通り越したような煉瓦色となっている。

 見た目からシェリー酒を想像したが、意外にも南国のトロピカルなドライフルーツの香りだ。

 味わいには始めに皮由来の渋みを感じたが、スパイスを含んだハチミツのような甘み、後味に紅茶みたいな滋味を感じる。


 しかし、アクのような嫌な雑味がなく心地良い。


『鶏とかぶのおぼろ鍋+年越しそば』


 葉付きの特大サイズのカブをいただいたのでどうしようかと考えた。

 クックでパッドで調べてみる。

 ズンボラ星人は残り汁が年越しそばや雑煮に使えるところに惹かれて試してみた。


 レシピ通りにとりあえず作ってみたが、どうやらカブが特大すぎて一個でも鍋に入り切らない量になってしまった。

 4分の1個と入り切らない葉っぱは雑煮用にし、どんぶり山盛り分のすり下ろしカブも残りは翌日にとっておこう。

 

 レシピ通りに鶏もも肉に焦げ目を付けて焼いてから一口大にカットし、他の具材とともにじっくりコトコトと煮込む。

 十分に火が通れば完成だ。


 実食。


 鶏もも肉を焼いたからか出し汁にコクがある。

 野菜もたくさん取れて身体も暖まる、それでいて美味いので鍋は良いものだ。


 ワインは気が付けばすでに合わせていた。


 個性の強いワインであったが、いつの間にか気心の知れた友のようにしっくりとそこにいた。

 違和感なく和風味の鍋とも合わせられる。


 2023年の締めくくりに相応しい食事に思えた。


 だが、このメニューはまだ12月30日のものだ。

 真の締めくくりは今夜31日の年越しそばだ。

 ワインもまだ半分ほど残っているので、良い年越しとなってくれることだろう。

 

☆☆☆


 激戦に次ぐ激戦、怒涛の日々が終わった。


 そう。

 28日木曜日、どうにか無事にブドウ棚造りは終わった。

 年内に終わらせるべき仕事だけはやり遂げることができたのだ。


 珍しく天気予報通り、この週は白き闇の勢力が衰えた。

 その隙を突き、攻勢に次ぐ攻勢で白き闇に打ち勝つことができたのであった。


 とりあえず最低限の仕事だけはやり遂げたが、苗木の植え付けに向けてやるべき仕事はまだある。

 他にも、新たな戦いに向けて準備を進めなくてはならない。


 しかし、使命をやり遂げたことで気が休まったことに変わりはない。

 この戦いを共に駆け抜けた相棒・軽トラが泥まみれなので洗車を行った。

 そして一旦骨休めをするために、近くの温泉に浸かろうと山道を走った。


 だが、忘れていた。

 街に住む多くの人間たちは長期休暇に入っていたのだ。

 

 現在の積雪量が圧倒的に少ないとはいえ、スキー場が目の前にあることもあり、普段はガラガラな日帰り温泉も芋洗いのようにごった返していた。

 そんな芋の中を進み、ゆっくりと湯につかれるスペースに入り込む。


 テニスをしていないのにテニス肘のようになっていたり、腰の筋肉が凝り固まっていたりと、酷使してきた全身を解きほぐしていく。

 このぬるま湯でダラダラしているだけで生き返るようだ。


 帰りにラーメンを食べて終戦日はゆっくりと夜を過ごした。


 その翌日以降、次の戦いへ向けて動き出す。

 来年新たに造成する部分をざっくりと測量してみた。

 家や道路を造るわけではないので、かなり簡易的にであるが。


 測量することで、畑の概略の設計を行い、必要な苗木の本数や資材代などが大体積算できるようになるわけだ。

 そこから予算組みとなり、苗木の予約となる。


 ちゃんとやっている農家の仕事というのはただ畑に出るだけではない。

 先を見据え、事務仕事や資金繰り等を含めた経営戦略を考えていく必要がある。


 そして、戦で忘れてはならない最も重要なもの、兵站の確保だ。

 

 僕自身自覚している最大の弱点、軍資金が圧倒的に無いのだ。

 それ故に資金調達を考え、クラウドファンディングを立てることにした。

 年末年始なので関係者はお休みということもあり、そのプロジェクトを少しずつ書いている。


 僕の場合は、代々家業を引き継いでいる農家から見たら、何も無い状態からのスタートだ。

 同世代の農家の息子に比べれば、ゼロどころかマイナスから始まっている。

 

 だからこそ、同じようなやり方や考え方では生存することもできないだろう。

 独りでもやれるような戦略を考え、即時実行する。


 そのため、農閑期の使い方が生命線となってくる。


 さて、偉そうに書き散らしたが、本日31日は大掃除で終わることだろう。

 新年元日は初詣に出かけて来年の祈願をしてゆっくりと休もうと思う。


 では、皆様、良いお年を!

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