11月第2週 試行錯誤を繰り返す

『プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア

 2021

 ポッジョ レ ヴォルピ』


 イタリア南部の土着品種プリミティーヴォ、アメリカを代表する赤ワイン用品種ジンファンデル、名前は違うが実は同一品種であったりする。

 なぜそうなったのかと歴史を紐解くと長いストーリーがあるが、簡略に済ますと19世紀初頭の苗木屋の取り違えだったと思われる。

 カリフォルニアの気候に非常にマッチし、さらに、栽培に特別な技術が必要なかったこともあり、現在ではアメリカを代表する品種になったわけであった。


 さて、そんな品種プリミティーヴォを開けてみようと思う。


 生産者であるポッジョ レ ヴォルピは、イタリア・ラツィオ州にあり、その実力はイタリアでも高評価されている。


 グラスに注いでみると、濃厚なワインレッドだと表現できる色合いだ。

 が、開けたてには思わず首を捻ってしまう。

 

 オーク(モンスターではなく木の方)の匂いしかしない。

 味わいもまさにオークの森にいるような感じである。


 しかし、次の日には味わいと香りが開いてくれたようだ。


 まだオークの香りが強いが、品種の持つ濃縮感のあるカシスっぽい果実味のある甘さ、ジューシーさはありながらもタンニンの渋味と重さのある良質な味わいだ。

 

 芳醇な黒い味わいといったところか。 


『スペアリブのコーラ煮』


 これで何度目か、またまたのダッチーオーブン料理である。

 今回はスペアリブをコーラで煮込んだ。

 コカ・コーラは実は良い調味料なのだ。


 作り方は単純明快、まずは豚のスペアリブの表面に焼き目を付ける。

 これでジューシーな旨味を中に閉じ込める。


 それからコーラをドボドボと肉全体が浸るまで入れ、大きめに刻んだネギとニンニク、生姜を投入する。

 こうして20分程煮込む。


 ここらで醤油を追加で入れて、さらに40分ほど煮込めば完成だ。

 お好みでさらに煮込んでも良いが、これぐらいでも十分に色が付いている。


 実食。


 コーラの炭酸の作用からか、スペアリブに軽く箸を刺しただけで肉がホロホロと解けていく。

 コーラの持つ甘さと醤油の複雑なしょっぱさが肉の旨味と絶妙な味わいを引き立てる。


 そして、ワインと合わせる。


 開けたて初日は、ワイン単体だとオークの味しかしなかったが、スペアリブの持つ脂が上手く隠されたベールを脱がせてくれたようだ。

 肉感のあるカシスのような甘さがやや表に出てきた。

 しかし、初日はグラス1杯で十分だ。


 次の日も気を取り直して同じメニューを作った。

 これが大正解であった。


 初日は重厚な鎧を纏った堅苦しい女騎士が、翌日には打ち解けて活発な明るさを見せてくれるようだ。

 黒系果実の肉感のあるプリミティーヴォが、スペアリブの旨味によって見事に昇華されていく。


 今回は辛抱強く待つことで、ワイン本来の魅力を味わうことができた。

 失敗と思っても次に生かすことができれば成功なのだ。


☆☆☆


 前回は激しいピストン運動だけで終わってしまったような気がするが、やることはそれだけで終わるわけではない。

 本来の目的はブドウ棚の設置である。


 地中に埋められたアンカーと繋ぐ各列の両端の支柱を立てる。


 この両端には、各列に植えられる予定であるブドウの木から伸びた枝を支える番線が張られた時に最も負荷のかかる場所でもある。

 大黒柱のようなものだ。

 そのため、最も太くて硬いモノをおっタテル。


 角度は大体45度にすれば、力の作用効率良く取れるので、まずはその辺りに穴を掘る。

 その根拠は物理の基本なので、学校の勉強も実務に生かせば、退屈な授業も決して無駄にはならない。

 生かすも殺すも本人の生き方次第であるが。

 

 穴掘りは、獣対策で使ったウエポン「アースオーガ」の登場だ。

 先端は直径200mmの大口径に付け替え、斜めにぶっ挿す。


 耕したばかりである上に、水分も含んでいるのであっさりと深々と突き刺さる。

 土が崩れて穴がすぐに埋まってしまうが、問題はない。

 オーガの力で土が解れているので、スコップで簡単にほしい深さと形の穴が作れるのだ。


 程よい深さと大きさの穴にコンクリートブロックを埋め込む。

 こいつは、支柱が立った後に地面にさらに深くめり込んでいかないようにするための土台のようなものだ。

 程よい角度になったコンクリートブロックの穴に、夜な夜な薪ストーブの前で作成していた部品をハメ込み、さらにそこに大黒柱の穴へ3Partsを合体させる。

 こうすることで、大黒柱が大きくズレることが無くなるのだ。


 この時に、地面に埋まる部分が錆びないように防食テープという錆止めを支柱に巻いてやる。

 どんなに立派な大黒柱でも、影で助けてくれる大切な存在が必要なのだ。

 それから土を埋め戻して踏み固めれば地中部分は完成だ。


 しかし、これはまだ仮に立てただけの状態なので、倒れないように支え棒をする。

 大黒柱に部品をさらに取り付けるのだが、まだ届いていないのでこの状態で一旦終了し、列の間の支柱の場所にマークを付けていく。


 だが、3列を始めた時に気が付いた。

 

「この作業、今やっても時間の無駄じゃね?」


 さて、ここらで気を取り直して、先にそれぞれの支柱の地中部分の部品の取付と防食テープ巻きをひたすらやることにした。

 数だけは多いので、この作業だけでも時間がかかる。

 ざっと計算してみると、独りでやったら3日か。


 暗くなってからと雨の日には、薪ストーブの前で資材の加工作業をひたすらやる。

 ちょいと特殊な仕立方にするので、支柱の地上部分に取り付けるためだ。

 こいつはまた次の機会に語ろう。


 雨降りの翌日、またもオーク……じゃないイノシシの侵攻があった。

 ヤツラがぶつかったのだろうか、せっかく立てた大黒柱(仮)が一箇所倒されているではないか。


 軽い丸太だった部分を押しのけ、そこから侵入してきたようだ。

 さらに重い丸太を追加し、侵入口と脱出したらしき場所を補強した。


 大黒柱の仮設置をすぐにやめてよかった。

 全部やった後にやられていたら、ランボーになるほど発狂していたかもしれない。

 オークのスペアリブも悪くはなさそうだが。


 トライ&エラー、試行錯誤を繰り返し、前進していくのみだ。

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