4月第2週 畑の?

『レ・カマリ・コトー・ド・ベジェ・ロゼ

 2021

 ヴィノ・X・テッラ』


 こちらでは桜が満開となったので、色の近いロゼを開けてみようと思い立って、たまたま街へ出たついでに買ってきたというワインである。


 ワイナリーについて詳しく調べてみたが、よくわからなかった。

 細かいことは気にしないでワインについて語ってみよう。


 南仏ラングドック産のロゼワインである。

 コトー・ド・ベジェ、これはIGPと呼ばれるその産地呼称で、その産地のブドウが使われているという意味になる。

 ざっくり日本語でいうとベジェという地域産だよ、という意味だ。


 さて、グラスに注いでみよう。

 

 桜色、というよりもサーモンピンクに近い。

 もっとも、花より団子の僕にはちょうどよいかもしれないが。


 赤ワイン用品種で造られているが、香りはまるで白ワインのように柑橘系を感じる。

 味わいにも桃のようなフレッシュなほの甘さもある。

 爽やかでお花見にちょうど良さそうなワインだ。 


『アスパラガスと生ハムのパイロール』


 お花見にちょうどよいフィンガーフードにしてみた。


 作り方もお手軽で簡単、アスパラを大体3等分に切り、小サイズの生ハムを巻く。

 次に、パイシートをアスパラよりも少し短めになるように切って、伸ばしながら巻くだけで準備は完了。

 最後にオーブンで焼くだけだが、我が家にそんな上等なものはないので、魚焼きグリルの火を弱火に調整してじっくりと焼く。


 程よい焦げ目とサクサクの食感になるまでパイ生地が膨らんで焼き上がれば完成だ。


 さて、お味の方は、サクサクの口当たりとパイ生地に含まれるバターの香りが良い。

 生ハムに火が通ったのでただのハムになっているが、程よい塩味が食欲をそそる。

 芯にあるアスパラが春を感じさせる青さがまた良いアクセントになっている。


 これだけでお花見の一品となること間違いないなし。

 このワインと合わせると軽やかにどちらもなくなるのが早い。

 

 だがしかし、この週末は天気が崩れ、どんよりとした空模様になってしまった。

 せっかく満開になった桜なのに、雨も降ってきてしまった。

 そして、雨は夜更け過ぎに雪へと変わる。


 サイレントナイトだが、ホーリーナイトではない。


 翌朝、冬が戻ってきたかのように薄っすらと白くなった景色、ブドウは芽吹き前でまだ大丈夫だが、芽吹きの始まったさくらんぼは大丈夫なのだろうかと心配になる。


 自然の気まぐれ、それが農家にとって死活問題となる。

 だが、それが自然とともに生きるということなのだろう。


☆☆☆


 独立就農となったわけだが、現在はまだ収入があるわけではない。

 そのため、自分の畑以外から当面の食い扶持を稼ぐ必要がある。


 幸運なことに、地元ワイナリーでアルバイトをさせてもらっているので、何とか生きていくことはできると思う。

 当然、自分の仕事との兼ね合いもあるので毎日という訳にはいかない。

 最も優先すべきは自分の畑なのだから。


 さて現在、アルバイト先ではブドウの芽吹き前に最後の剪定が今週半ばに終わった。

 芽吹き前だが、他にもやるべき仕事がまだまだあるので、食いっぱぐれることは無いだろう。


 そして、アルバイト終了後、すぐ近くの自分の畑へと繰り出す。

 芽吹き前に最低限の仕事は終わっているが、少しでも畑を綺麗にしようと思う。


 ブドウは蔓植物である。

 そのため、所謂巻ひげと呼ばれる蔓を何かに巻き付けながら枝を伸ばしていく性質がある。

 剪定の終わった畑では、この巻きひげと呼ばれる残骸が至るところに残されているのだ。

 この巻きひげを取り除く作業を少しずつ行っていた。


 その理由として、巻きひげに昨年以前の病原菌が越冬しているからだ。

 こいつが春先になり、雨水で伝播していく。

 で、様々な病気の原因の1つになるというわけである。


 この作業は実に地味で地道な作業だ。

 日暮れまでの小一時間、毎日やってコツコツ進める。

 これで完全に病気予防となるわけではなく、多少効果がある程度に過ぎないと思う。

 だが、やらないよりはマシだろう。


 他にも、先週採取した土壌サンプルを乾燥し終わったところだ。

 乾いたのだが、ガチガチの土の塊の状態だ。

 これを細かく砕いて、目の細かいふるいにかける必要がある。

 

 後日、最寄りのJAに持ち込んだ時、ここまで丁寧にやらなくてよかったらしいことを言っていた。

 でも、この方がより正確な診断ができるから良いとも言っていたので、良しとしよう。


 さて、初めは土の塊を指で砕いていたのだが、時間がかかりすぎるし握力がなくなってきてしまった。

 で、考えた。

 

 ジップロックに入れて空き瓶でゴリゴリとすり潰せば楽だし金もかからないのではないか、と。


 実際にやってみると一気に楽になって作業も捗った。

 それでもサンプル数はそれなりにあったので、夕方から始めて終わる頃には深夜になってしまったが。


 そうして翌朝、最寄りのJAに土壌診断サンプルの提出ができたわけだ。

 この後、午前中は忙しくあちこちを車で走り回った。

 そして、午後には自家用車の処分をした。


 車検も近いし、色々とガタが来ていたし、雪道の斜面も登るパワーがないので泣く泣くお別れだ。

 車がなくて大丈夫なのかと心配するなかれ、翌日に軽トラックが納車された。

 中古のローンだが。


 スバルのサンバーが「畑のポルシェ(笑)」と呼ばれているとか。

 この軽トラは日産なので……畑の?

 車の詳しい方に決めてもらおう。 


 とりあえず公私兼用の軽トラをゲット、着実に装備が整い始め、より農家らしくなってきたのであった。

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