#4

 30分ほど前…


 時刻は夕方の5時半になろうとしていた。


 日が沈む時間だ。


「確か、先輩が悪魔スキルを使えるのって夜だけだよね?どうしてなの?」


 彼女は50年前までは人間だった。


 強制的にアンデット化させられたせいか、人間時代の記憶はもう残っていない。


 彼女に残っている一番昔の記憶は魔王になりたてのただの悪魔が洗脳をし始めるところだ。


「お前の命を救ったのは我だ。お前は我に忠誠を誓うのだ。」


「はい、魔王様。」


 その時は魔王に命を救われたのだと思っていた。


 おかげで彼女は2週間足らずで四魔族になり、この能力破壊と創造を手に入れた。


彼女がもともと人間だったというのを自覚したのは、記憶の悪魔、ガルドに会ってからのことだった。


「ふむ、貴様、人間ではないか。」


「いえ、私は四魔族の…」


「いや、我の能力で貴様を見るに、肉体に刻まれた記憶じょうほうは人間であると言っている。」


 その時、初めて彼女の中にあった無意識な記憶を見た。


 それを見た瞬間、自分は人間であること、強制的にアンデット化させられたこと、この二つを自覚した。


 以来、彼女はどうすれば魔王軍を抜けられるのかを模索し続けた。


 特に大変だったのが、魔王にかけられた“絶対的服従”の呪い。


 内容は「裏切ったら即死する」というもの。


 毎日毎日どうすれば呪いが解けるのかを研究した。


 “全ての呪いはかけられる側の魔力を吸収することで成り立っている”


 これが彼女の見つけた呪いの法則。


 彼女は早速自分の魔力を減らすため、魔力を吸い取る魔導機械を作った。


 そのおかげで極限まで魔力を減らし、魔王軍から逃げることに成功。


 ただ、代償として魔力が完全回復した後でも夜しかスキルを発動させられなくなってしまった。


「これが質問の答えです。」


 日が完全に沈むまで残り20秒。


「裏切った罰が当たったんですね!!」


「私は元いた世界に戻っただけです。」


 残り5秒


 4、3、2、1…


「悪魔スキル:創造・拘束壁!!」


「なっ!!」


 日が沈んだ直後、彼女の背中から禍々しい赤紫に光るコウモリのような羽が生え、ベルゼルの四肢を謎の黒い壁で拘束した。


「悪魔スキル:創造・三本槍」


「がはあッ!!」


 地面から黒い3本の槍を生やし、ベルゼルの腹に刺す。


「あなたは一体、何人の人を殺しましたか?」


 ベガの目はいつものような穏やかな目ではなかった。


 いつも隠し続け、腹の底でぐつぐつ煮えていた怒りの目。


「そ、それは…」


「悪魔スキル:創造・熱源」


 ベルゼルを拘束している壁が突如、赤くなり、炎が燃え上がる。


 ベルゼルの断末魔がその能力の恐ろしさを物語る。


「あ、ああぁぁああぁぁ!!先輩がその戦い方をするのなら…僕も使わせてもらうよ。悪魔スキ…」


「創造・落石!!」


 空中に大きな質量を持った岩を創り出し、ベルゼルに落とす。


「隙が無いね。」


 ベルゼルのスキルを発動させない方法は一つ。


 発動直前に大ダメージを与えること。


 だが、それをすることによって、ベルゼルを拘束していた壁が壊れる。


「今度はどんな戦い方をするんすか?先輩。」


「本当は、これはずっと保管しておくつもりでしたが…きっとあの人は、この時のために託してくれたんですよね?」


 商店街のベガの店の下から何かが飛んでくる。


「ありがとうございます、デルタさん。私はあなたにまた救われてしまいました。」


 刹那、ベガの手元に魔界を破滅寸前に追いやった刃が現れた。


「…ッ!それはまさか!?」


「魔剣エクスカリバーです。」

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