第19章:その日見た悪夢から
#1
町についた頃にはもう遅かった。
目に映る景色は地獄そのもの。
建物に頭を潰されている人の横で泣きわめく赤子、
商店街では顔なじみの人が血を出して倒れていた。
魔王軍が来たのだろうが、どこにも見当たらない。
「いやぁ、ここは天国かな?」
俺達は後ろにいたこいつがこれをやったのだとすぐに分かった。
「〈フレイム・ブロー〉!!」
ボブが後ろを振り向き、拳を振るう。
「おっと、危ない危ない、後ろの人に殴りかかるなんて、一体どういう神経してるんだよ。」
「お前こそ、これを天国とはどういう神経をしているんだ。」
「まぁまぁ、落ち着けゴリマッチョ君、これをやったのは僕じゃないんだよ?」
「じゃあ…」
「あいつさ。」
その男が指さしたその先にいたのはコアに穴が空いたナイトゴーレムのヴィラグだった。
「君たち、本当に汚いことするよね。自分達のパンツで封印とか、頭おかしいんじゃないの?」
それは…否定できない…
「まあいいさ、最近魔界が荒らされてね、気が付いたら四魔族の1人、支配と自由のブルヴェルが雑魚魔族と一緒に殺されてるわけ。見た感じ、僕たちの手下の零の悪魔の方が活躍してるの。いやあ、びっくりだよね。」
「何が言いたい…」
「強い奴でも、決して死を選べるわけじゃないってこと。」
その瞬間、ナイトゴーレムのヴィラグが襲い掛かってきた。
「僕の能力の一つ、自分が殺した者の操作。これはメインの能力じゃないのだけれど、まあ、メインを使うまでも無さそうだし、言わなくてもいっか。」
つまりヴィラグはこいつに殺されたってことか…
コアに穴が空いているのもこいつがやったのか!?
「〈サウザンドゴーレム〉」
まずい!!
「全員、逃げろ!!」
次の瞬間、地面が盛り上がり、1000体のゴーレムが出現した。
「ちなみに、ヴィラグ君が使っている魔力は僕のモノだからね。魔力切れを起こさない以上、君たちが戦った彼よりもずっと強力だよ。」
まずい、なんだこいつ、強すぎんだろ!!
「ボブ!!全部破壊できるか!!」
「まかせろ!!」
俺のパーティーにボブがいて本当に良かったと思う。
彼のことは誰が見ても同じ意見を出すだろう。
正に無類戦士、どの階級にも当てはまらない最強の戦士だ。
「ベル!!お前は町中の助けられる命を全部助けて回れ!!」
「分かったわ!!〈サウンド…」
「え、ちょっ…まっ!!」
「リプロダクション〉!!かーらーのー!!」
ベルの爆音は町中に響き渡り、手足を失っている人、頭が無くなっている人の肉体が修復される。
今日ほどこいつの爆音に感謝した日はない。
「〈サウンド・リサセテイト〉!!」
町中の人が一瞬で生き返る。
流石、最高聖癒士といったところだ…
「まさかこんな広範囲に蘇生魔法をかけられる人間がいるとは…最初から“あれ”で殺しとけば良かったな。」
よそ見をする敵に向かって俺はダガーを…
「お前の相手は、この俺へぶぅ!!」
「ちょっとケンタロー!!あんた最上級冒険者になったからって強くなったわけじゃないんだから下がってて!!〈サウンド・ヒール〉!!」
「あり…がどう…」
いつもなら耳が痛いだけの爆音も今日だけは心地いい。
やっぱ俺は後方支援か…
「ショット!!<神速>!!」
__ダン!!
「ガハッ!!っと…危ないなぁ。ん?あの特徴的な武器…まさか!!」
ん?
今こいつ、「まさか」って…
「もしかしてこれ…まずい…?」
「ヤマダケンタロー君!!会いたかったよ!!そして…殺したかったよ!!」
こいつ性格もやべえ…
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