#6

 湖の都、ラークス


 先生の故郷であり、俺達の修行の地。


「デルタさんはこの鍵をあなた達に託すと言って魔界に乗り込んでいきました。」


 その鍵は白銀で作られた高級品だった。


「この家の地下室の鍵だそうです。では、私はこれで。」


 あの人の家に地下室があっただなんて…


「ケンタロー、行きましょう。」


「おう。」


 鍵穴に鍵を挿し、回す。


 するとゆっくり扉が開いた。


 扉の奥には地下に通じる階段が現れる。


 その階段を降りるとそこには四畳半ほどの部屋があった。


 部屋の真ん中にはまとまった紙があった。


 その紙にはこう書かれている。


“ケンタローへ、この資料にはワシの作った数々のスキルの使用方法が記されている。恐らく君の固有スキルの性質上、目を通しただけで習得できてしまうはずだ。”


 俺のためにスキルの取扱説明書を用意してくれたのか。


 きっと、俺が魔界に行くことを想定して書いたんだろう。


 でも、ごめん先生。


 俺は魔界に行く気なんてさらさら無い。


 俺に先生みたいな勇気は無いから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る