#5

「…まさか自爆とは、だがこれで、魔剣エクスカリバーは我の物に…エクスカリバーはどこだ?」


 勇者の右腕デルタの伝説は閉幕した。


 だが、彼の作戦はまだ続く。


 聖剣や魔剣は条件付きで前の使用者が後継者を選ぶことができる。


 彼が選んだのは…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 王家護衛の任務が終わってから二人の様子がおかしい。


「ケンタロー、今日も隕石魔法に付き合ってくれますか?」


「おう、もちろんだ。」


 いつもならケンタローは嫌がってリリルに付き合おうとしないのだが、ここ最近はリリルの趣味に何も言わず付き合っている。


「ケンタローなんかあったのか?」


「いや何も?」


 俺が尋ねてもいつも同じ答えだ。


 本当に何があったというのだ?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 あの夜、リリルに告白された。


 あの夜、人生で初めて告白された。


「ケンタロー、私は、あなたの事が好きです。なので、一生そばにいて欲しいんです。一生そばにいてくれますか?」


 一生そばにいてくれますか?というのは「付き合って」という意味なのだろうか?


 きっと、今までたくさん恋愛をしてきた人なら分かるのだろう。だが、俺にはさっぱり分からない。


「なあリリル…」


「なんですか?」


「あの時の「一生そばにいてくれますか?」ってのはどういう意味なんだ?」


「…意味も分からずOKしたんですか?」


「ま、まあ、リリルの事は…嫌いじゃないし…」


「クスッ…」


「おい、何がおかしいんだよ。」


「いや、そのままの意味ですよ。一生そばにいてくださいね。」


「それって、恋人になりたいって意味なの?」


「恋人になるのはまだですよ。」


「は?」


「恋人になっちゃうと私たちのパーティーの関係がどうなるのかも分からなくなりますし…」


「どゆこと?」


「…鈍感ですね。だから、恋人になると、変に意識して私がボブと話せなくなったり、ケンタローがルルと話せなくなったりするかもしれないんですよ。」


 うん、なんとなく理解した。


「私達は、時が来るまで仲間でいようってことですよ。」


「なあ、時って何?」


「ええい、もうめんどくさいですね!!ほら、いつものところにつきましたよ!!〈メテオライト〉!!」


 目的地に着くや否やリリルは突然隕石魔法をぶっ放す。


「おい、詠唱をしてなかったけどいいのか?」


「大丈夫です。魔法眼がステージ3になりましたから。」


 俺はさらなる問題に気が付いた。


「え、お前、隕石魔法ぶっ放しても倒れなくなったの!?」


「そうですよ。ステージ3に移行しましたから。隕石魔法を放っても魔力に変換された分の体力は瞬時に回復するんです。」


 魔法眼って便利だなぁ…


 俺にも魔法眼があればきっと最初から強かったんだろうなぁ…


「さ、帰りますよ。」


 確か魔法眼にはこれの上の段階があったような…


 そんなことを考えながら俺達は家に帰った。


「おい2人とも!!………ッ、これを……」


 家に帰るとボブが飛び出してきた。


 どうやらデルタ先生から届いた手紙と今日の新聞が問題のようだ。


 新聞には


“先代勇者の伝説、閉幕”


“昨日、午前9時頃、先代勇者の右腕、デルタ・ベックス・ジュピタ氏が魔界に入った。デルタ氏は魔界にて約5億5000体(99%)の魔族をわずか3時間で討伐、世界記録を大きく塗り替えた。しかし、その後、魔王と対峙した際にデルタ氏の生命反応が消え、死亡が確認された。68歳だった”


「噓…だよな?」


 俺達はにわかに信じがたい事実を突きつけられながら先生から届いた手紙を読んだ。


“ケンタローパーティーのみんなへ”


“この手紙を君たちが読んでいるということは、ワシはもう死んでいるということだ。信じられないと思うが、これは紛れもない事実。というわけでワシの葬式の招待状を同封しておく。これを持っていれば、ワシの葬式の会場に自動的に転送魔法で飛ばされる。どうしてこんなことをするのか、それは君たちに渡したいものがあるからだ。会場に行けば一人の騎士からそれが渡されるはずだ。では、葬儀会場で待っている”


“デルタ・ベックス・ジュピタより”


 俺達の目からは自然と涙があふれていた。


 それと同時に俺達は王都の葬儀場に飛ばされた。


 そこで聞いた話だが、デルタ先生の肉体は遺っていないらしい。


 唯一遺っているのは、部屋にあった指輪だけ。


 その指輪はベガがデルタ先生にプレゼントしたものだという。


 ベガも葬儀場に来ていた。


 あんなに大泣きしているベガは初めて見た。


 葬儀は終わり、暗い雰囲気の中で一人の騎士に声をかけられた


「ケンタローパーティーの皆さんですね。少しお時間よろしいでしょうか?」

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