第18章:伝説の閉幕、そして———
#0-1
俺は昔から目立つことが無かった。
いや、注目されることが無かったのほうが正しいか。
だからステージで何かをやったり、表彰も、発表も、したことがないしされたこともない。
マイナス面で注目されることもなかった。
人をいじめたことはもちろんない。犯罪に手を染めたことも不登校になったこともない。
高校を卒業してからは引きこもり、何をするでもなく、ただ淡々と毎日漫画を読んだりラノベを読んだりの繰り返し。
注目されることのない毎日。
でも、転生してからその人生は大きく変わった。
モンスターを倒したり、報酬をもらったり、褒められたり、表彰されたり…注目されてばかりだ。
そして今、俺から最も遠いはずのイベントが始まろうとしていた。
「一緒に収穫祭、回りませんか?」
その少女は19歳なのにロリっ子、魔女なのに帽子もかぶっておらず、左眼の中に紋章を宿した最強の魔法使いだ。
「…お」
「ケンタローパーティーメンバーの皆さんに連絡です。国王陛下よりお言葉があるそうです。至急、教会までお集まりください。」
いいところで邪魔が入った。
「エッグタウンでの魔王の大軍の殲滅、魔王軍幹部3体の討伐、2体の無力化、そして魔王軍最高幹部の一体である四魔族ガルララの討伐…君たちは人類のために十分貢献してくれた。よってここに君たちの活躍を称え、全員最上級職の称号を与える。」
唐突な呼び出しで唐突な昇格が宣言された。
これで俺は晴れて最下級冒険者から最上級冒険者、リリルはアドバンスウィザードから100年ぶりの最上級大魔導士へ、ボブはアドバンスファイターから史上初の無類戦士、ルルはアドバンスフェンサーから宮本武蔵以来の最上剣王、皆それぞれ自分の職の最上の称号を貰っているが…
「ねえなんで私だけ
「おいベル!!私たち全員首が飛ぶぞ!!」
ベルがヒスを起こした。
「いやよ!!なんで聖職者の称号なのよ!!わたむぐぐ…」
「頼む!!本当に静かにしろ!!おい、俺まだ死にたくねーぞ!!」
「私もだ。頼むベル、静かにしてくれ!!」
「そうですよ!!処刑されたらこの称号が無くなっちゃうではないですか!!」
「その通りだ。今までの功績がチャラになるのだぞ!!」
俺達は全力でベルを黙らせる。
すると王様がにっこり笑いベルに囁く。
「ベルさんはお酒がお好きと聞きました。最高聖癒士は聖職者の中でも魔法使いに近い役職のため唯一お酒を飲むことができる職業ですよ。なんなら聖癒士は一度魔法使い職を経験していないとなれない職業と言われています。なので生活は今までのままで、いや、今までよりも贅沢していいと思いますよ。」
「ま、まあしょうがないわね。いいわその称号で。」
「おい陛下に向かってタメ口叩くな!!」
「はっはっは、別にいいですよ。冒険者は荒れていてなんぼです。」
この人は神か?
ラノベや漫画、アニメでここまで温厚な王様はそうそういない。
俺達は王様に土下座で礼を表し、退室した。
ただ、正直いって称号に少し不満がある。
最上級冒険者ってこの世界ではそんなに珍しい職業じゃないんだよなぁ…
ほかのパーティーメンバーが「何年ぶりの!!」とか「史上初の!!」とか「○○以来の!!」とかなのに俺だけ誰でも簡単に取れる最上級職なんだよなぁ…
最上級冒険者って一般職と呼ばれる冒険者でもとれるんだよなあ
「どうしたんですか?浮かない表情して…」
俺はその時思った事を話した。
「あ~、でも、最上に違いはありませんよ。周りが何と言おうと、私から見たらあなたは誰にも劣らない本当の最上級冒険者ですよ?胸を張ってください。」
今のはなんか意味があるのか?それともただそう思っているだけなのか?
いや、勘違いはしない…
「そうだ、さっきの話、どうします?一緒に回るんですか?回らないんですか?」
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