#10
「これが…聖剣…」
俺は生まれて初めてファンタジーでも、噓っぱちでも、絵の中でもない本物の聖剣を見つけた。
その聖剣は石化し、鎖が巻かれていた。
一見するとすぐに抜けそうなものだが、実はそうでもないらしい。
この剣は選ばれし勇者にしか石化という封印は解けず、永遠に抜くことができないらしい。
もちろん俺は神に選ばれたわけでもなく、ただ金の欲しさ故ここに立っている。
しかし選ばれし勇者じゃない俺の能力をお忘れではないだろうか?
俺は“全能”だ。魔力少ないけど。
最近一つ分かったことがある。
俺の魔力でも現象系や気象系は直接対象に触っていれば普通に使えるということだ。
俺はこの聖剣を抜くために1つ方法を思いついた。
「勇者様、では、抜いてみてください。」
俺はさっきまで馬車の中でリリルと話していた。
そこでリリルと取引をした。
「ケンタロー、作戦ってなんですか?」
「俺の魔法を使って無理やり聖剣を引き抜こうと思う。」
「そ、そんなことしていいんですか!?」
「抜ければいいんだよ。抜ければ。」
「でも、静電気を起こすぐらいしかできない魔力でどうやって?」
「それが問題だ。だが、お前が協力してくれれば解決する。」
「まさか隕石魔法使うんですか!?」
「ちがう。」
「もしかしてこの髪飾り欲しいんですか!?」
「惜しい。」
「このステッキ!?」
「あとちょっと。」
「ステッキの持ち手!!」
「水晶を貸してくれ。」
「ダメですよ!!これが無くなるとステッキが機能しなくなるんです!!」
「帰ったら新しいステッキを新調してやる。魔法3層式ステッキだ!!」
「よし!いいでしょう!!貸してあげますよ!」
というわけでステッキについている青いほうの水晶を貰った。
これはいわゆるステッキの電池みたいな役割を持つ“魔力石”と呼ばれるものらしい。
これを持っていれば一般人でもそこそこ魔力が上がる。すぐ戻っちゃうけど。
俺はこれを使って聖剣ビクトリーカリバーを引っこ抜く!!
「さ、勇者様早く!!」
「では。」
俺は小声で他の人に聞こえないようそっと呪文を唱えた。
「地盤魔法〈グラウンド〉」
地盤魔法、地面の状態を変化させる魔法。
今俺は裸足になりこの魔法を使ってビクトリーカリバーの刺さっているところの地面を液状化させている。
先ほどもらった魔力石を使ったおかげで人並みの魔力が出せている!!
しかしさすが聖剣だ。
地面がドロドロに溶けてもなかなか抜けない。
俺は今、人生で初めて死ぬほど力を使っている。
「うおおおおお!!くあああああ!!!」
と、その時…
__ボコ…
ビクトリーカリバーの下から空気の音が…
次第にその音は大きくなっていく。
そしてついにその時がやってきた。
「いよっしゃああああ!!...剣が…力が…抜ける…あれ?」
おかしいぞ?
あぁ、そうか…まさかこんな所で俺の運の悪さが出てくるなんてな…
どうやらビクトリーカリバーが抜けた反動で倒れた俺は、服のポッケから魔力石が飛び出して一気に俺の体力と魔力が0になったわけだ。
一体何時間分の魔力を使ったのだろう?
魔力が0を下回ると死んでしまうらしい。
俺はまさにその死の淵を歩いている。
転生先で死んだら俺、どうなるんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます