#5
「そんなに凄い戦いなのか…?」
「まあ、見てなさい。これは世界最強同士の威圧戦です。」
「え?威圧戦?」
俺が間抜けな声を出した瞬間、その威圧戦は始まった。
「よう、王都のお偉方。今日もここは通さねえ。」
「これはこれは、門番さん。今日はあんた1人かい?」
「ああそうだ。悪いか?」
門番が手の上で大きな氷の結晶のようなものを作った。
「門番さん、あんた1人でこの兵士団に勝てるとでも?」
「そんなことは思っていないさ。俺はあくまでこの村の門番。氷結のシンだ。何回このセリフを言えばわかる?最恐剣士ルーペ・ヴィルト・ホーリーソード団長。」
「私の名前はそんなに短くないが、流石だ。おかげで自己紹介の時間が省けた。」
「そんなことよりなんだ?あんた達はまた綺麗ごとを言ってこの村で儲けようとしてんのか?」
「そんな欲望にまみれたことではない。この村は5つの聖剣の1つを保有している。故にここが魔王軍に占領されてしまっては我が国は一つの遺産を失うことになる。そこで王都から兵士団を直接送り、ここで守りを固める。村の警備もより一層厚くなる。そなたたち門番も王都の優秀な兵士団として受け入れるつもりだ。魔法においてはそなたたちの右に出る者がいないからな。毎日贅沢な暮らしができることを保証しよう。そなたたちのためだ。お通し願おう。」
「あんたもしつこいなぁ。何度も言っているだろう?いい加減察しろよ。この村の護衛は俺を含めた護衛兵だけで十分だ。お引き取り願おう。」
「ほう、そうか。今回は王の特例で抵抗する者は殺してよいと言われている。不当な武力は行使したくなかったが、仕方ない。」
ルーペ団長と呼ばれる男が剣を構えた。
それと同時にシンという護衛兵の手の上の結晶が変形して氷の槍ができた。
先ほどまでのピリッとした空気は一瞬にしてずっしり重い空気になっていた。
「いつもこんな感じなんですか?」
俺が聞くと村長さんが答えた。
「いつもは剣の柄に手を置くだけで終わるが、ついに剣を抜いたか…これはまずいぞ…」
「噓だろ!?」
「遠い天空に浮かびし迷える星よ…」
「やめろ!詠唱唱えるな!」
隣にいたリリルは隕石魔法の詠唱を唱え始め…
「ケンタロー、悪い、少し隠れる。」
「どうした!?気分でも悪いのか!?」
向かい側にいたルルは馬車の椅子の影に隠れ…
「ここは私の音響魔法で!」
「やめろ。今度こそ死んじまう。」
ルルの隣のベルは音響魔法の準備を…
「ケンタロー、同じ現象系の仲間として参戦させてくれ!」
「それだと俺も巻き込まれんだよ!やめろ!」
ボブは参戦しようとしていた。
いよいよ戦争が始まってしまうのではないか?と誰もが危機感を覚えた。が…
「今日はこのへんで許してやる。だが特例が出た今、次私達が訪れた際、おとなしく命令に従わなければ命はないと思え。お前ら、撤退だ。」
「…」
ルーペ団長は剣を鞘に納め、兵士とともに帰っていった。
護衛兵はやっぱり肝が据わっている。と思ったその時だった。
「ふぁ~!怖かった~ッ!いつもの感じだと思って1人で来たら特例出てびっくりしたぁ~!死ぬかと思った~!」
先ほどの門番の鏡のような人は緊張が解けると突然ナヨナヨしくなった。
「え?なんかあの人性格急に変わりましたよ?」
「あれが平常運転だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます