#4

 馬車は安定しているな。


 つい先日まで劣化版人力車みたいなのに乗って酔っていたからか馬車がとても心地が良い。


「やっぱり馬車は良いですね!酔いません!」


 一番酔いに苦しんでいたリリルは目を輝かせながらそう言った。


「お客さん。そろそろメルテ村に着きますぞ!」


 早いな。まだ半日も経っていないのに。さすが超速馬だ。


 メルテ村はこの世界の大陸の西端に位置するという。


 そして聖剣はこの大陸の北端、南端、東端、西端、そして中央に配置されており、世界で5本しか存在しない神器だ。


 聖剣はそれぞれ北端の精霊剣、南端の巨人剣、東端の十束の剣、西端のビクトリーカリバー、そして中央のエクスカリバーと呼ばれている。


 一応、うちのパーティーに聖剣に選ばれた戦士がいるということは、家の中に総理大臣がいるのと同じくらい凄い事なのだが…あまり実感はない。


 だって斬撃魔法は使用者の運が悪すぎて敵に届く前に消えちゃうし、自分の戦い方間違えてるし、どこからどう見ても聖剣使用者だとは思えない。


 本人から聞いた話だと聖剣はそれぞれ魔法じゃ絶対に敵わない力を持つらしく、十束の剣は“一応”敵意を持って切りつけた傷は一生治せなくなる力を持つらしい。


 そして先ほど村長に聞いたら俺がこれから抜くビクトリーカリバーはあらゆる魔法を無効化し、所有者に絶対勝利をもたらす力を持つらしい。


 なにそれチートじゃん。これ本当に抜けたら俺、魔力無くても生きて行ける。っていうか魔王倒せるじゃん。


 と、思ったその時だった。


 村の高い壁の門をくぐった瞬間、鎧を着た兵士のような人が1人、村の門の前へ走っていった。


「あの人は一体?」


「我が村の護衛兵です。ここは5つの聖剣の1つを保有する村なだけあってよく王直属の兵士団が送られてくるんですよ。どうやらこの土地を封鎖し、聖剣を保護したいのだとか…」


「王直属!?」


「はい、それはもうこの国最強の剣豪一家、ホーリーソード家の当主ルーペ様や、同じくホーリーソード家の後継ぎとされているルベリオ様など、とてもこの村の護衛兵じゃ何人束になっても剣術や体術では勝てない方ばかりです。しかし安心してください。うちの村の護衛兵は一流の現象系魔法使いです。まあ、見ていてください。これはこの村に来たら見ておかないと損しますよ?」


「そんなに凄い戦いなのか…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る