#8

 これはなめてたわ…


「でかいゴキブリじゃねえか!!!」


 大きさはこの前のバッタの3倍はあるな。


 でかいバッタだけだと思ったのにでかいゴキブリも走ってんのかよ…


 しかもこいつ遠くから見てもわかる、バイクで爆走してる時と同じくらい速いじゃねえか!


 それに加えて奴らはこの季節になると数百匹の群れで行動するらしい。


 フライバッタの数十倍気持ち悪いな。


「私の隕石魔法を見ててください」


 彼女は両端にそれぞれ赤と青の水晶が付いた魔法のステッキを袋から取り出し、詠唱を唱えた。


「遠い天空に浮かびし迷える星よ、このリリルが強大な魔力を持ってここに招喚する。落ちろ!隕石魔法〈メテオライト〉!!!」


彼女が詠唱を唱えると周辺の雲が一気に消え、空に巨大な魔方陣が描かれた。


 魔方陣を見ているとその中心から煙を出しものすごい速度で落ちてくる隕石が見えた。


 思ったより小さいな...


 だが、隕石は隕石、小さくても燃え尽きる事なくゴキブリの大群へ落ちてゆく。


 そしてその瞬間はやってきた。


「駆除完了です。」


 隕石はそのままでかいゴキブリの大群を吹き飛ばし、隕石でできたクレーターの半径は見た感じ学校の校庭2つ分ぐらいだ。


 おかげでジャイアント何とかの大群は全滅、その半分が跡形もなく消滅、残った個体も体が大きく欠損していた。


 しかし困ったのはギルドまでこの2~3百匹の巨大ゴキブリを運ばなくてはならないということだ。


 あいにくこのパーティーには台車はない。


 ギルドが雇う運送業者もあるが金がそこそこかかるため頼めない。


 俺が困っているとボブが信じられない行動に出た。


「よいしょっと。」


「ゑ!?」


 なんと片手で半分程度の量のゴキブリを背負ってしまったのだ!!!


「そんなに持って大丈夫なのか!?」


「大丈夫だ。ゾウが背負えるものはだいたい片手で持てる。」


 こいつ人じゃねえ。


 まあでも、一匹当たりの巨大ゴキブリの重さは意外と俺一人でも持てるぐらい軽かった。


 それでも100匹近くを積み上げ持ち帰るという行動は明らかに頭がどうかしてると思った。


「リリル、俺たちも少しは手伝うk…」


 リリルのほうを見ると彼女はなぜか倒れており、すやすやと寝てしまっていた。


「え?ちょ、どういうこと!?」


 俺がこの状況に混乱しているとボブはリリルがなぜ寝てしまっているのか説明してくれた。


「ケンタロー、魔法というのは破壊力が高ければ高いほど体力と魔力を使う。特にこの大地を滅ぼせる程の力を持つ隕石魔法を今の威力でノーダメージで放つには恐らく8時間分の体力を一瞬で消費して放たなければならない。この後はゆっくり寝かせてやってくれ。」


まさかそんなエネルギーを使う魔法だったとは…


 俺はリリルとステッキを背負いボブの後ろについていった。


 今回の報酬としてうちのパーティーは36万ネイツという超大金を手に入れた。


 とは言え3人で分けたら12万だ。


 理由は今回ギルドに持ち帰った際、多くの個体が大きく欠損して価値が大きく下がり、すべて完全体だったら300万ネイツ近く手に入れられたものの売り物として売れる個体は36匹だったためこの値段だった。


 そして今回の報酬で俺はオタクパーカーを封印し、異世界らしい装備を一式買った。


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