第2話
「旅人さんかい? この街は始めてだよな。悪いが街に入る前に身体検査させてもらうぞ」
ようやく街についたオカザキとブッコローは、大きな門の前で街の門番だろう男に声を掛けられる。
日が暮れる直前ということもあってか、オカザキ達の前にも後ろにも人はいなかった。
「おう、好きなだけザキを調べてくれ」
「鳥がしゃべった!? こいつ、ブンボーガーか!?」
「やっべ、つい声だしちゃった」
「あ、あの、このミミズクは違うんです!」
「ミミズクだぁ!? こんな色して喋れるミミズクなんているはずないだろうがっ!」
門番は持っていた槍を構え、ブッコローに向けて槍先を向ける。
それに対し、オカザキがとった行動は。
ブッコローを両脇から抱え、門番に差し出すことだった。
「ちょ!? ザキさん!? いや、オカザキさん!?」
「あの、触って下さい。コレはちゃんと生きてて暖かいですから。それにこんなに喋る鳥なんて見たことなくないですか」
「コレ扱いは酷くねっ!?」
「……わかった。直接調べさせてもらうが、もし変な動きをしたらお前もろとも容赦はしないぞ」
「はい。構いません」
「構うでしょ!?」
必死に抵抗し、騒いでいたブッコローだが門番の手が伸びてくると自分の安全性を示すためか大人しくなった。
そして、門番がブッコローに触れる。
ふひっ、と間抜けな声を上がったが、その後は我慢して疑いが晴れるまでじっとしていた。
「いやぁ、悪かったな。近くの森に鳥型のブンボーガーが住み着いていてな。神経質になってたんだ」
ブンボーガーとは、先日倒した紙のモンスターの総称だ。
魔法で動く種族で、その体からは魔法のインクを生み出す。
以前は大人しく、一部の人間と取引があるくらいには友好的だったのだが、半年ほど前から急に人を襲いだすようになったのだとか。
「まっ、わかりゃあいいのよ。で? この美しい体毛をタダで触って、このまま済まそうってわけじゃないよなぁ?」
「急に強気なミミズクだな、おい……。はぁ。この街は始めてなんだろ? 詫びと言っちゃあなんだが、聞きたいことがあればわかる範囲で教えてやるよ」
ブッコローは宿、酒場、ギルドと呼ばれる商業組合、それに賭場の場所を聞く。
オカザキはそれに加えて、文房具が売っている場所だ。
情報収集を終えたオカザキ達は宿を取り、ギルドへと足を運ぶ。
換金が目的だ。
ブンボーガーは魔法のインクを生み出す。
それは切れ端からでも抽出可能であり、大きさや種類によって金額は様々だ。
用途は様々で魔法の道具を作る原材料の一部となる。
街の商人達が中心となってギルドという組織を作り、旅人などから買い取るために建物一つを用意するくらいには需要が高い。
この街に辿り着く前に数体を倒してして入手した切れ端は、日本円にして約6万円程度の通貨に姿を変えた。
6万円を、共用、オカザキ、ブッコローの三等分にして分ける。
旅の疲れもあり、その後は一人と一羽は宿へ戻ってゆっくりと休んだ。
ズテテズッデ♪(場面転換)
「っかぁぁ~~~~!! 異世界の酒も悪くない! 女の子も可愛い子多いし」
「そうですねぇ。不思議な文房具が一杯あってとっても楽しいです」
街に着いた翌日は自由行動となり、お互い別々に行動して、宿に戻ってきていた。
ブッコローは酒と賭場を求め、オカザキは文房具が売っている店を巡りにだ。
今、ブッコローの首からは一つの木札がぶら下がっている。
門番がなにやら「このしゃべる鳥安全」というニュアンスでこの世界の文字を書いてくれていた。
おかげでブッコローは街を堪能することができたようだ。
「ねぇブッコロー。これ見て下さいよ」
「えぇ~なんすかぁ?」
「この本、すごいんですよ」
「えぇ~? また何か買ったんすかぁ?」
「ちょっと見てもらえます?」
そう言って、オカザキは一冊の本を取り出す。
ブッコローはその羽で器用にパラパラとページをめくるが、ほとんどが白紙で、所々この世界の文字とオカザキが書いたと思われる文章が少しある程度だった。
「はぁ。これなんすか?」
「ふふふ。こうするんです」
オカザキはその本に書かれた文章に手をやり、サッと動かして文章をなぞる。
「はぁぁああ!? 文字が消えた? いや、これすげぇすね!!」
「すごいでしょう? でも、一つだけ欠点があるんです。
気を付けないと書きながら文字が消えちゃうし、メモに使おうにもいつの間にか消えてたりするんです」
「っかぁぁあああっ!! 全く使えねぇ!! ちなみにいくらでした?」
「昨日のお金の半分くらいです」
「1万円くらいってこと!? 使えない上に高けぇ!! んん~~けど面白い!!」
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