萌香の家族
ふいに「ふふっ」と聞こえた。
「詩織、幸せそう。綺麗な子が美味しそうに食べる顔、可愛い。」
「なっ!?萌香はもっと可愛いよ!」
「ありがとう」って萌香は微笑んだ。
そういえば、萌香の家族の話ってあんまり聞かない。「ご両親のお仕事って?」って聞いたら、少し寂しそうな顔をし
「私の両親は、人の為の仕事をしているの。多くの人を守る為に頑張ってる。忙しいから、あんまり一緒にいられない。家の事も、ほとんどお手伝いさんがやってくれるの。」
寂しそうに話す萌香。思わず「ごめん」と言ってしまった。
「謝らなくて大丈夫だよ。2人とも出来る時はお弁当作ってくれたり、手紙書いてくれるんだ。誕生日とかイベントは、なるべく一緒にいられる様にしてくれてる。寂しさはあるけど、人の為にって頑張る両親は誇らしいよ。私も次話をする時、良い話が出来る様にって頑張ってるんだ!」そう微笑む。
その後、萌香の家族の話をした。去年のクリスマス、お休みをとったお母さんとケーキを作ったら夕方帰ってきたお父さんがケーキを買ってきちゃった。クリスマスプレゼント、両親がお互いへ贈るプレゼントがどちらも手袋で『仲良しだね』って皆で笑いあった事。ある日曜日、お休みになったお父さんと一日中ゲームをしていたら一緒にお母さんから怒られた事。数年前の誕生日、仕事が忙しくて帰れるか分からないって手紙が来てたのに、学校から帰ったら沢山の手料理を準備して両親が『サプライズ!!』と出迎えて驚いた事。どうしても寂しい時は、電話をする。出られないのは分かってる。けど、手が空いたら電話してくれる。夜遅い時は、メッセージを残してくれたり動画を送ってくれる。
毎日会えない寂しさの中、会える時間を大切にしている。本当に愛されている。
彼女の話に微笑む詩織だったが、心のどこかに虚しさを感じていた。
罵倒してくる大人。嘲笑う表情の小さな女の子。「ごめんなさい」とうつむく。
どういう場面か分からない。けど、一瞬脳裏に掠めた状況が虚しさを強めた。
記憶の彼方 @applepeachpie
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