待ち合わせ

9時55分。時間ギリギリに駅に着いた。もう少し余裕を持たせるつもりだったんだけど。萌香に連絡しようとしたら、背後から鋭い気配を感じた。振り向こうとした瞬間、「しーおりーぃ」と聞き馴染んだ声とともに背中から抱き付かれた。


「ビックリした!萌香、お待たせ。」

「私も今来たの。詩織が見えたからゆっくり近づいたんだけど、全然気が付かないから抱きついちゃった!」

えへへとお茶目に笑う。ゆるふわなハーフツインにピンクのワンピース。メイクもしていつもより萌香が可愛い。「眼福…っ。」思わず呟いた言葉にクスクス笑われる。「詩織もパンツ似合ってるね。スタイルが良いからとても似合ってるよ!」って褒められると照れちゃう。

お互い照れ笑いしながらカフェに向かった。


カフェはオープン前から列が出来ていたみたいで少し並んだが、さほど待たずに席についた。

カフェメニューは、どれも魅力的で迷ってしまう。新作は、桃のパンケーキ、メロンのタルト、さくらんぼのパフェ。悩みに悩んで私はメロンタルト、萌香は桃のパンケーキを注文した。注文後、今朝の師範代とのやりとりを話した。

「それは過保護だねぇ。まだ中1だからって、もう少し信用して欲しいよね。まぁ、放任気味のうちの親より良いじゃん?」

いや、あの言い方は過保護とは違うような。上手く言えないけど、「危険だから行くな」みたいな?考えてると、萌香の視線が私を越えてその先をじっと見てる。


「お待たせしました。」

振り返ろうとしたら、後ろからケーキが運ばれてきた。コトッと目の前に置かれたケーキ。タルトの上に半円にくり抜かれた黄緑とオレンジ色のメロンが交互に並び、ケーキの奥には小さくカットされた黄緑とオレンジ色のメロンが2つ添えられていた。萌香の前にはふっくら焼かれたパンケーキが2枚重なり、ほんのりピンク色のクリームがかけられた上には、ダイスカットされた桃とミント。パンケーキの横にカットされた桃が添えられている。どちらのケーキもお皿にソースで彩られ、さらに美味しそう。

「いただきます」とメロンを口に運べば、特有の甘さがたまらない。タルトもしっとりして美味しい。手が止まらなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る