足音

「雨、やまないねぇ。明日も雨かなぁ?」


今日も雨。昨日も雨。一昨日も雨。ずっと雨!毎日毎日、どれだけ雨が降れば雨雲はなくなるの?

明日は土曜日。萌香とケーキを食べてプレゼントを選ぶ予定なのに、降水確率30%とか微妙な予報が出てる。せめてお出掛け中は降らないでほしい。なんなら晴れてくれないかな。


「明日雨でも詩織は予定通りで大丈夫?」

「もちろんっ!萌香も大丈夫?」


放課後の教室で萌香と明日の予定を確認する。カフェは混まないうちに行こうって事になって駅前で10時集合となった。プレゼントの目星はついたか聞かれたけど、全然検討が付かない。

「プレゼントだけど、お店見回ってから決めても良い?全然思いつかない。」

「いいよ!一緒にいろいろ見たいから気にしないで」


はっとして後のドアの方を振り返る。…誰もいない。

「どうしたの?」と萌香に聞かれたけど、「なんでもない」としか答えられない。視線を感じた、けれど誰もいない。不確かな事で萌香に心配をかけたくない。気のせいって事にしてやり過ごす。


「早く帰らないと学校にお泊りですよー。」

いきなり前から朝日先生が声をかけてきた。そういえば朝のホームルームで、これから外部会議だから早めに学校を閉めて教師もいなくなるって言われた。


「かい先生と一緒にお泊まりなら居残りするー」「私もー!」って何人かのクラスメイトの女子が騒ぐ。


「残念ながら僕もいません。代わりと言ってはなんですが、人体模型君を手配しますか?骸骨君でも構いません。音楽室のピアノも夜勝手に音楽を奏でるとか。なんなら学校のどこかにある石像も歩き出すみたいですね。あとは…忘れましたが、"みんな"で楽しい夜が過ごせそうですねぇ。ちなみに、闇にのまれると帰って来られなくなるので気をつけてくださいね。」


先生がいないなら帰ると皆教室を出ていく。結構古い七不思議的な事を言ってたけど、皆気にしないんだ。カッコいいと多少の事は気にされないって得ですね…


教室を出る時、「八木原さん」と朝日先生に呼び止められる。振り返ると「落としましたよ」と先生が私のハンカチを差し出した。「ありがとうございます。」とハンカチを手にしたが、先生は私をじっと見て手を離さない。不思議にしていると「気をつけて」と言って手を離し教室を出て行ってしまった。なんなのだろう?とりあえずハンカチをしまって帰る事にした。



「ただいまー」と玄関を開けたら、タオルを持ったママがいた。「おかえりなさい。今日は帰りが早い日だったかしら?」雨の日は、いつもタオルを玄関に置いてくれる。「ありがとう」とタオルを受け取った。

「明日は10時に駅前集合だから、9時前には出発するね。」

ママに明日の予定を伝えながら家の中へ進んだ。


…パシャ。

この日、家の門まで付けられていた事を私は気づかなかった。

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