候補者 -朝日視点-

「先生、お話ししよう」

放課後、職員室から出て早々に生徒たちに呼び止められる朝日。目的地へ早く向かいたいのに呼び止められて苛つくが、そんな感情を表に出さない。

「ごめんねぇ。ちょっと急ぎの仕事があってお話しできないんだ。それに帰りが遅くなったらお家の人も心配するし、変な人にも会いやすくなるから早く帰ろうね。部活がある子は、1年生のお手本になる様に頑張ってきてね。

また今度お話ししようねー。」


生徒たちを送り出し、誰もいない事を確認して職員用の資料室へ入った朝日。抜かりなく内側から鍵をかける。


職員用資料室。主に個人情報や進学先の情報、学校運営等の資料があり職員以外は立ち入れない。朝日は生徒の個人情報ファイルを開く。


『八木原 詩織

 入学時魔力測定 火・魔力強

 入学時試験 2位

 1学期中間試験 1位

 授業態度 真面目

 素行不良 報告なし

 備考 保護者…八木原家』


「ふーん。『保護者…八木原家』ってのが気になるな。」

容姿も悪くなく、素行も良い。自宅が武道場だからか作法も備わっており、魔力強で火使い。年齢も12歳とちょうどいい。だが、備考欄が気になる。実子ならそんな記載はない。養子なら養子となる。しかし保護者となっているのであれば、養子にしない理由があるのか?朝日は探ってみる事にした。


「どちらにせよ坊ちゃんの嫁入合戦の選考が始まっている。決定打に欠けるが彼女にしよう。

そこそこまで残ってくれれば目的は果たせるし、嫁入してくれたら言う事はない。」

彼女と同スペックかそれ以上の候補はいる。正直、最終選考に残るか分からない。しかし目標を達成すれば、欲しいモノが手に入る。


不敵に笑う朝日。詩織の情報を記録し、誰にも見つからない様資料室をあとにした。

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