付き人 -焔目線-
「おかえりなさいませ、焔様」
寮の自室に帰宅した焔。いるはずのない本家の付き人の出迎え。用事があるなら電話してくれば良いのにとため息をもらす。
「帰ってきたら?」と無言の圧力で迫られ、小さく「ただいま」と返答した焔に満面の笑みをする付き人。
「電話しても出ないで、メールも返信してこない。今回は焔様にとって重要な事なので、直接伝える様にとご当主からのいいつけです。」
当主… 焔の父方の祖父で朝緋が運営する染絲会社の会長、朝緋家の最高権力者。そんな人物からの直々な話となるとめんどくさい事しかないと思っている焔。
「そんなに眉間にシワを寄せて嫌な顔をせずとも。とりあえず夏期休暇の際に本家へ出向く様に。詳しい話はその際にすると。お帰りの際はお迎えにあがります。」
「今教えてくれない?」
ぶっきらぼうに答えを求め付き人の脇をすり抜け、鞄と上着を机にほおり椅子に腰掛ける焔。普段は人に見せないイラついた雑な態度は、思春期から来るものか?そんな態度に何事もなく上着をしまう付き人も慣れたもので。
「詳しくはなんとも。ただ複数の学校のパンフレットと複数の女性の資料を確認していた様で。」
「…分かった、もう良い。あとは?」
「以上でございます。お迎えの日時は後日お伝えしますので、くれぐれも忘れずに。」
最後の語尾を強めた付き人。「失礼します」と部屋を出ていった。逃げようと思ったが、追跡の力でどのみち見つかる。無駄な逃走のせいで多方面から無駄にお説教されるのは面倒なので、諦める事にした。
進学と許嫁。
中高一貫だから、進学は大学の事。許嫁に関しては分からない。が、どちらも時間的猶予がまだあるはず。当主だろうがなんだろうが、勝手に決めないでほしい。
焔は憤りを感じつつ、着替え始めた。
ふと少女の事を思い出した。ぶつかったけど、大丈夫だったかな?どこかで会った気がするけど、気のせいかな?
少女の事が気になるけれど、それ以上に付き人や当主への怒りでいっぱいになった。
---
…見つけた。
あの女だ。
変わらない。
手に入れたい。
あの女を手に入れたい。
あの女は、まだ宝玉を見つけてない。
宝玉を隠したまま、あの女を手に入れる。
今度こそ、あの女を…
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