出会い

中学校生活にも慣れてきた頃、ついに中間テスト期間となった。

学力別のクラス編成だが、基本の出題範囲は4組に合わせて100点満点テストが作られており、各クラスに応じた難易度の問題が+@出題される。こちらは基本的にテスト採点には反映されないが、内申点に上乗せされる。

内申点は、進級時にも加点対象とされる。つまり頑張れば下剋上可能、怠ければ転落していく。


日々の復習と自主学習でだいたいテスト対策が出来た詩織は、萌香に頼まれ一緒に勉強を行った。やはり萌香との勉強は良い。質問されて、始めて自分も理解しきれていない事に気づく。一緒に調べて、教師に質問し、理解していく。遊びだけでなく勉強も一緒に頑張れる大切な友達。


テスト本番は、やはり緊張する。自分の努力があっているのか試されてるみたい。けれど分かる問題、特に萌香と調べた問題が出てくると嬉しい。萌香も一緒だといいなぁ。



テスト期間は早帰り。テスト最終日でもそれは変わらず。テストが終わった開放感で満たされる。自分へのご褒美に今日はケーキを買おう!一緒に師範代とママの分も買おう!

ウキウキ気分で帰宅する。私服に着替えて、師範代とママに好きなケーキを聞いて。ついでにママからお買い物リストをもらった。



ドン。

ケーキ、何にしようかと考えながら歩いていたら、人にぶつかった。謝ろうと相手を見たら目が合い、お互い止まってしまった。

少し赤い色素が混ざった黒髪の男の人。3歳上位かな?大きな目、180cm位のすらりとした身体。他校の制服着てる。かっこいい人。でも胸騒ぎがする。近づいちゃいけない。けど、何かを確かめなくちゃいけない。どうしたら良いか分からない。


「焔、大丈夫か?」

男の子の友達の声で我に帰る。謝らなきゃ。

「すっすみません。」

「大丈夫、こっちもよそ見してたから。キミも大丈夫?」

「はい。」

…優しい人。


「朝緋ー、置いてくぞー。」

「おーっ、今行くー。

じゃぁ。気をつけて」

別のお友達に呼ばれ、2人は行ってしまった。


ホムラさん。…アサヒさんとも呼ばれてたな。

どっちが苗字?

…まぁいっか。

胸のモヤモヤをかき消し、お買い物再開。

まずはスーパーでお使い。

ケーキ屋さんに寄って、モンブランとショートケーキとフルーツタルトを選んだ。一緒にフィナンシェやバームクーヘンなど日持ちする焼菓子と大きなクッキー缶を買った。最近、お腹空くの早いんだよね。育ち盛りかな?


ケーキ屋さんを出る頃には、男の人の事なんてすっかり忘れた。

帰宅後、クッキー缶を兄弟弟子の荷物置場に置いた。稽古後はお腹が空いてるので、大量のクッキーは瞬く間に消えた。おかげでケーキは必守出来た。



夕食後、ママが紅茶を淹れてくれた。蜂蜜入りの優しい味。

師範代にモンブラン、ママにショートケーキ、タルトは私の。でも3人で少しずつ食べた。どれも美味しくて、やっぱり1個には決められない。


穏やかで優しい時間。ずっと続けばいいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る