魔力測定後

夕飯時。兄弟弟子達の帰宅後、師範代夫婦と3人で食卓を囲む。

現在この家には師範代夫婦と私の3人で暮らしている。夫婦の実子の兄は結婚し家を出た。私の他に養子の兄もいたが、一人立ちし巣立っている。


「ほぅ。『火使い』の魔力強と。やっぱり魔力強かったか。周りは焦がさなかったかい?」

夕飯を食べながら魔力測定結果を報告。どうやら師範代は、測定結果より焦がす方が気になる様子。

「焦がしません。上手くできました!」

少し怒りながら答える私に、スクスクと微笑むママ。


ママは、師範代の奥さん。女の子を育てるのが憧れで、私を保護した時にべったりくっついて離れなかったらしい。それが可愛くて可愛いくて『ママ』と呼ばせる事にしたと聞いた。全く覚えてないけど。

ちなみに最初は師範代もパパと呼んでいたみたいだが、稽古中にパパ呼びしていたら師範代が甘々になって稽古にならず。泣く泣く師範代呼びとなったらしい。


「毎日しっかりとお稽古してるもの。詩織ならその辺りは上手く出来るわ。勉強の方はどう?難しくない?」

「まだ本格的な授業は始まってないけど、大丈夫そうだよ、ママ。」

「心配は要らないよ、ママ。うちの詩織なら学年上位をキープ出来るさ。」


私の通う学校は、学力に応じて高い順に1組〜4組へと分けられる。各組の学力に応じて授業内容のレベルを調整する。新入生は入学前に試験を行う。『一緒のクラスになるの‼︎』と萌香は勉強頑張っていた。おかげで2人とも1組に入れた。


「入学試験で3位なんて立派だったな詩織。次も頑張って。」

「うん。頑張るよ師範代。」

試験当日は、桜が咲いていた。桜は好きだけど、なんだか調子が狂ってケアレスミスが続いた。いつもの調子なら1位になれたな。でも1位だと新入生代表として入学式で前に出なきゃいけなかったから、結果オーライかな。




---


-八木原視点-


「はい、八木原です。」

食後、中学校から私宛に入電と妻に呼ばれ電話に出た。詩織は自室に戻っている。

内容は魔力測定の結果だった。普通の子供なら魔力の込め方も戸惑う子が少なくない。だが詩織は、水晶を浮かせた、真っ赤な炎で水晶を包み、それらを何の苦も無く淡々とこなしていた事。『八木原』の子なら、先に目覚めた魔力に対しある程度の修行を行なっているはずと協会に信頼され、学校経由での連絡となった。以降も彼女に魔力のコントロールについて対処する様にとの事だった。


詩織の魔力なら、100歩譲って水晶を覆う炎を出しても理解出来る。が、あの水晶が浮く?大人2人がかりで持ち運ぶ水晶を何の苦も無く浮かせる?『火使い』が?

…やはり詩織の魔力は不思議で、どこか引っかかる。


協会も『先に魔力に目覚めた』と言っていた様だが、数ヶ月前に目覚めた事と思っているといいのだが。

詩織が変な問題に巻き込まれない事を願った。

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