普段の生活

「来週は身体測定・魔力測定あるから、休まず登校する様に。」


担任の諸連絡の後、日直が号令をかけてホームルームが終了。金曜日の放課後だけあって皆どこか浮かれている。


「詩織っ。この後遊ぼ!」

「ごめんなさい、この後予定があるの。

先に帰るね。またね。」

帰宅後すぐに稽古があり、帰路を急いだ。



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八木原やぎはら 詩織しおり

それが私の名前。中学に入学したばかり。


私には、幼い頃の記憶がない。

倒れていたところを師範代夫婦に助けられたと聞いている。当時『詩織』と書かれた服を着ていたが、それ以外の事が分からず。

師範代夫婦は我が子の様に育ててくれた。当初、魔力が暴走していた私に魔力の制御方法をはじめ、力の使い方を教えてくれた。学校にも通わせてくれた。『八木原』も師範代の名前。

師範代夫婦にとても感謝しているし、本当の両親の様に思っている。2人に余計な心配をかけない様に勉強も修行も頑張るのが、今の私が出来る恩返しの仕方。



記憶がない事については不自由していない。

友達も多少の誤差はあるが、幼少期の記憶なんてひと握りしか覚えていない様子。それよりも今を生きる事の方が楽しそうで、昔そんな事あったね程度の記憶。私に昔の事を聞かれても、「覚えていない」で済む。嘘はついていない。



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小さな炎を一定に保ちながら瞑想している。


以前はボール大の炎でも安定せず、すぐ大きくなり過ぎたり、高温になったり、力が無くなって倒れたりしていた。『火使い』の上、力の制御が不安定だったので、修行を始めた頃は兄弟子達と離れての稽古をしていた。気を抜くとすぐに周りの物を焦がしたのは良い思い出だ…。冬の庭、寒かったなぁ。炎のおかげで風邪ひかなかったけど。


「だいぶ炎の大きさや温度を維持出来る様になったね。」


ふと師範代の声がした。相変わらず気配がない。


「来週、魔力測定だって?詩織は既に『火使い』と分かっているから、あとは魔力がどれぐらいあるかだね。」

「はい、師範代。今からドキドキです。」

「周り、焦がさない様にね。」


不吉な事を微笑んで言って、兄弟弟子の方へと行ってしまった。

…魔力測定って、何するの?

疑問と不安を胸にしまい、次の課題に取り組んだ。

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