炎の宝玉
かつてこの地に火を司る神がいた。
火の神は、水晶の中に炎がゆらめく宝玉を使い人々を導いていた。
火の神は、『炎使い』の魔力の強い巫女に宝玉を渡した。宝玉を使い人々を導き、また次の巫女に宝玉を受け継ぐ様伝え、天へ帰っていった。
数百年後、宝玉を守り続ける美しい巫女がいた。
巫女は神に仕え、人々にも優しく接してきた。
巫女に恋をした青年がいた。
仕事に精をだし、村でも一目置かれ、誰が見ても好青年であった。
青年は巫女に思いを伝え続け、やがて2人は結ばれた。
青年は、村人の勧めもあり村長となった。
次の巫女が現れない為、巫女は結婚後も巫女を続け、同時に青年を支え続けた。
数年後、青年へ密かに重圧がのしかかっていた。村長となり、村を治めなければならない。美しい妻は、今も巫女を続け人々からの信頼もある。
村長として上手く対応できているのか?村人は、自分についてきてくれているのか?
妻はいつも優しくしてくれるが、心の中で自分を嘲笑っているのではないか?
巫女がどんな言葉で青年を励ましても、青年は聞き入れず。重圧が青年の心を蝕んでいった。
そんなある日、青年は宝玉を見つけた。
ゆらめく美しい炎。人々を導く不思議な力。宝玉に魅入られ、巫女の目を盗んでは宝玉を手にし見入っていた。
宝玉に魅入られいく日々の中、この宝玉を自分だけの物にしたいという
宝玉を奪われた巫女は、探し続けた。
青年が奪った事は薄々分かったが、それより巫女として宝玉を守れなかった責任感に押し潰され心を病み、床に伏せてしまった。
青年に尽くしてきたのに大切な物を奪われた哀しみ、巫女の責任を果たせなかった自責の念の中、やがて息を引取った。
「死んでも宝玉を探し続ける」
そう言い残して。
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