第71話:改善と町創り
「何が悪いと思う?」
「全部」
蟹男が動画を見せながら尋ねると、鮫島は断言した。
「動画配信をなんでみんな見るとおもうっすか? 面白いからっす。 この動画には信頼がない、華がない、エンタメがない。 説明するにしても口だけならなんとでも言える、説得力がないんすよ」
「じゃあどうしたらいい?」
「マルトエスさんの仮面を取るとか、見た目が絵になるなら街の様子を映すとか……何か餌があれば手っ取り早いんすけどね」
鮫島の言葉を受けて蟹男は『――その情報があれば世界が変わる』とアリスが言っていた言葉を思い出した。
「それならこれの情報ならどうだ」
蟹男はそう言って魔法を使って見せた。
「誰でも出来る魔法の使い方」
「まじっすか……それが本当なら十分すぎるくらいっすよ」
〇
魔法について触り程度の解説を配信しつつ、ダンジョン運営の中心である冒険者ギルドの重役に出演を頼むことによって情報の信憑性を高めた。
本来であればスキルもなく魔法が使えるなんてデマだと誰もが思うだろう。
しかしそれが本当なら、魔法は誰だって一度は使ってみたい能力の一つだ。 みんな興味はあるのだろう、再生回数も登録者も少しずつ増えていった。
「さて本格的に町造りをしていこう」
蟹男の構想ではこの町は市場のある中心地と、図書館兼学校そして訓練場が要となる。
この町には基本的に住居は用意しない。
ここに滞在するためには魔力の提供またはモンスタードロップの売買によって、生活の全てを賄ってもらう必要がある。
「学校で魔力操作、魔法を学んで、その魔力で生活してもらう。 そしてゆくゆくは今まで戦闘に参加していなかった人間もモンスターと戦えるようになれば、モンスタードロップが量産され、市場が活性化していく……上手くいけばだけど」
「そして市場ではファンタジーの本場である異世界の店が出店しているんすね! もうここは小さな異世界じゃないっすか」
蟹男としてはダンジョン発展のために魔力が、そしてダンジョンの安全のためにモンスターを討伐して欲しいのでFマネーでの支払いは可能だが、相当高額に設定する予定だった。
ここでのやり取りは基本的に物々交換と、魔力によって行われる。
そして支払われた高額のFマネーを使って蟹男はマーケットで食材調達などをしていくのだ。
「ここで暮らしていくためには魔法の勉強と戦闘をすることが必要なんすね。 最悪戦えないなら勉強を頑張れば最低限は生きていける、と」
「そうだよ。 さすがに子ども、怪我人にまで戦えとは言えないからさ。 だけど勉強なら誰でもできるだろ? 俺は勉強嫌いだけど……」
「僕も勉強は嫌っすけど、魔法ならむしろやりたいくらいっすよ!」
目を輝かせる鮫島に、蟹男は魔法の勉強は想像以上に勉強だぞと言いたくなったが、水を差すのも悪いので黙っておいた。
話しているうちにもダンジョンはどんどん変化していく。
中世ヨーロッパ、異世界風の街が出来て、そこが壁で囲われていく。
まずは図書館兼学校を創り、そして訓練場を創る。
市場はとりあえずテントで対応するつもりだ。 必要なものは全て持ち込みでお願いしているが、マーケットの商人は全員アイテムボックス持ちなので問題ないだろう。
後は建物を乱立して、蟹男の街はとりあえずの完成となった。
「よし、三日後。 住人の受け入れを開始する」
これから準備の最終段階に入っていく。
新たなメンバー鮫島を加え、蟹男のダンジョン創りは大詰めとなるのであった。
***
名無しのD民:
俺もついに本物の魔法使いになる時が来たか
名無しのD民:
マル先生、顔隠してるけど絶対美人だよな
名無しのD民:
異世界ってマジであるのかよ
俺も行きてー
名無しのD民:
もはや現実もほぼ異世界だけどな!
名無しのD民:
これ相当人集まるよな
抽選とかになるのかな?
名無しのD民:
いやいや冒険者にとってはいい街だけど、一般人からしたら微妙なんじゃねえ?
魔法の勉強もタダじゃないんだろ?
食うためには結局戦う必要があるだろうし、普通に配給のあるフロアに行くとしたら意外と少ないんじゃない?
名無しのD民:
俺は絶対行く
今いるところより絶対こっちの方が楽しいだろ
楽しくなきゃ生きてる意味もない
名無しのD民:
確かに普通のフロアだとなんか住人の雰囲気がどんよりしてるんだよな
マジで気が滅入るわ
名無しのD民:
ドロップ貯めれば店開けたりするのかな?
名無しのD民:
歓楽街作ってくんねえかなー
名無しのD民:
さすがにそんな余裕ないだろwww
でもあったら絶対行く
名無しのD民:
受け入れまであと三日
それまでしこしこドロップ貯めておきますか
***
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