第41話:掲示板/英雄の凱旋




***



ーー人間も捨てたもんじゃねえ! ドラゴンVSを語るスレ。



1:名無しの冒険者:

人類の可能性を感じた。


2:名無しの冒険者:

わかる。

そもそもドラゴンって外にいたんだ。


3:名無しの冒険者:

東京ではわりと有名だよ。

勇者は昔に遭遇して、その時は一目散に逃げたらしい


4:名無しの冒険者:

まさかの因縁w

そりゃそうだろ、普通戦おうなんて思わん


5:名無しの冒険者:

やり直しがきかないからな


6:名無しの冒険者:

もしかしてあいつらループしてね


7:名無しの冒険者:

ドラゴンってなに?

誰か教えて


8:名無しの冒険者:

東東京の勇者くん

ヘリと爆弾使って

ドラゴン撃破


9:名無しの冒険者:

は? まじ?


10:名無しの冒険者:

まじまじ。

撮影者が拡散希望って言ってるから

コピー動画が世界中に拡散されてる


11:名無しの冒険者:

再生数えっぐ


12:名無しの冒険者:

撮影者は大損だけど、

これは確かにお金とかではなく

社会的に世に広めるべきヒロイックだった


13:名無しの冒険者:

うん、なんか心が軽くなったわ


14:名無しの冒険者:

慣れたといっても無意識に色々考えて、それが溜まってたのかもな

それが晴れた感じ


15:名無しの冒険者:

さすが勇者様の光


16:名無しの冒険者:

ありがたや~


17:名無しの冒険者:

ありがたや~


18:名無しの冒険者:

撮影者って勇者くんとこのメンバーだよね?


19:名無しの冒険者:

そう、というか取りまとめ役の人だよ

んでハーフ顔でめちゃ美人


20:名無しの冒険者:

まじか!!!!


21:名無しの冒険者:

ドラゴン<女

人類大丈夫そ?


22:名無しの冒険者:

もう一人の空から降ってきたやつ何者なんだろう

というか何の職業なのかな?


23:名無しの冒険者:

アイテムボックスじゃない?

異世界ものでよくある、アイテムボックスで質量攻撃無双的な?


24:名無しの冒険者:

定番だけどアイテムボックスってスキル聞いたことないな


25:名無しの冒険者:

だよな

職業はポーターとか? 商人とか?


26:名無しの冒険者:

選ぶ奴いねーよ

ゲームの縛りプレイじゃあるまいし

転職できるかもわからんのに


27:名無しの冒険者:

確かにw


28:名無しの冒険者:

まあなんにせよ拍手しか出ないわ


29:名無しの冒険者:

888888

……ところでドラゴンの素材っておいくらなんです?


30:名無しの冒険者:

感動ぶち壊しでわろた


ーー

ーー

ーー


100:名無しの冒険者:

なんかやる気湧いてきたわ

『目指せドラゴンスレイヤー! 職業大公開:情報交換スレ』

http://hdiushdiqusd/jdn/wfssd/18984273478979833


101:名無しの冒険者:

感化されすぎ

情報公開は危険じゃね?


102:名無しの冒険者:

いや確かに未来のためには有益ではある


103:名無しの冒険者:

世界存亡のいしずえになるんですね、わかります


104:名無しの冒険者:

俺には二歳の娘のためにパパは勇気出すぞ!


105:名無しの冒険者:

俺も息子が


106:名無しの冒険者:

俺も双子が


107:名無しの冒険者:

俺は三つ子!


108:名無しの冒険者:

嘘で張り合うのは虚しくないのか


109:名無しの冒険者:

未来に幸あれ


110:名無しの冒険者:

締めっぽいのやめろw


ーー

ーー

ーー



***



 蟹男は再び召喚屋の手引きで異世界へやってきた。


「お久しぶりです。 またお会いできるとは思いませんでした」


 そう言ってほほ笑むルナールは少し疲れているように見えた。

 もしかして学園でまた何かあったのかもしれない。 ならばもったいぶる場合ではないと、蟹男は単刀直入に言った。


「うん、ドラゴンの首を手に入れたからさ」

「……はい? 今なんと?」

「だからド、ラ、ゴ、ンだよ。 王女様の試練の話だよ」


 蟹男がそう言うと、ルナールは悲しそうに表情を歪めた。


「そのような冗談はおやめください」

「いやいやいや! 冗談じゃないから! ね?」

「はい」


 蟹男が必死になればなるほど、ルナールの表情が曇っていく。 しかし同意を求められたマルトエスが頷いたことで、ルナールはようやく信じる気になったのか驚愕で口を打ち上げられた魚のように開閉した。


「我が主様はドラゴンを討伐しました。 この方はドラゴンスレイヤーとなりました」

「そんな、え? 本当に? いや」

「主様、ドラゴンを討伐するということはこの世界にとって、日本で言うと戦車と生身で戦って勝ったというようなものなので……お気を悪くされないでください」

「いや実際に相対してるから、気持ちは十分わかる。 今でも現実感ないもん」


 蟹男はルナールが落ち着くのを待ちながら、退屈そうなミクロの相手をして過ごした。


「…………大変失礼いたしました」

「全然いいよー」

「お前が言うんか……」


 ミクロの気の抜ける返事で、硬くなった空気がふっと緩んだ。


 蟹男はミクロを撫でて、席を立った。


「現物見ないと完全に信じられないと思うし、さっそく行きますか」

「あの王女の驚いた表情が楽しみです……」

「マルトエス……意外と根に持つタイプなのね」

「え、あ、あの」

「ほら、いこ」


 ミクロに手を引かれながらルナールはどこかふわふわした雰囲気で王女の待つ怪しげな店へと向かった。

 彼女は戦闘専門であり、性格はマイペースでつかみどころがない。 しかしこういう時、緩和剤として優秀なのだ。


(ドラゴンスレイヤーの凱旋が気まずい雰囲気じゃ面白くないもんな)


 凱旋というよりは実際は散歩といった雰囲気だが、まだ果実の効果の残っている蟹男には世界の拍手喝采されている気分だった。






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