File07
「理事長さまと校長さまがご理解のある方で助かりましたわ」
そう言って、夫人は妖艶な笑みを浮かべた。
「いえいえ。今回の事件は……まだ事件と決まったわけではありませんが……私どもは対策チームを結成し、狡毅くんを無事保護するために全力を尽くしますので、どんな小さなことでも良いので情報を共有していただけないでしょうか?」
校長が、さも、自分は教育者の鑑であるかのような口ぶりで言った。
「ええ、もちろんですわ。主人は、先生方もご存じの通り忙しい身ですので、子どもたちの教育も含めた家でのことはわたくしの方がよく把握しているかと思いますので、わたくしの方からお話しさせていただいてもよろしいかしら?」
「ええ、もちろんでございます」
夫人の毒牙にかかったらしい理事長と校長が鼻の下を伸ばしながら言った。
「息子の送迎は毎日うちで雇っているドライバーに任せているのですが、昨日の夕方、ドライバーから『ご子息が見つからない。連絡も取れない』と連絡がありましたの。あの子は頭が良くて優しい子だから、出来の悪い子の勉強を見てあげたりして帰宅が遅くなることも時々ありますの。でも、そういう時は必ず連絡をしてくれる子なので嫌な予感がしましたわ。わたくしも御校に駆けつけ、御校の関係者の方々に協力をいただき校内の隅々まで捜していただきましたが息子は見つからず。主人に連絡をし、警察に捜索願を出して……あの子のことが心配で一睡もできず、早朝、息子とそっくりな銅像が……」
そこまで話すと、夫人は声を詰まらせ顔を覆って泣き出した。妻の背中をさすりながら、恐田氏が、
「大丈夫だ。きっと、悪い悪戯に決まっている。狡毅は無事に私たちの元に戻ってくるさ」
と言った。
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