第4話 怪物達の世界

「瑠偉、ストレートだ」


3回表、ラストバッターを追い込んだ俺はストレートの握りを見せ、宣言した。

馬原は既に準備を終え、今か、今かと待っている。

ならやることは一つ。

開戦の合図として、俺の本気を見せつける。

そうすりゃ、他のレギュラー陣も出て来ざる終えなくなるからな。

ーー相良ァ、レギュラー出さねぇと完全試合喰らわすぜぇ。

この雑魚共は俺の相手にならねぇからなぁ。


「打てるもんなら打ってみな!」


俺は完璧な体重移動で踏み込み、腕を振り切った。


「158km/hだと!?」

「高一で!?」

「ちぃせぇんだよ、俺はKINGだぞ。

そこらの雑魚Pと同じ基準で計んな。

俺の基準は俺でしか計れねぇんだよ。

俺がマウンドにいる限り」


スカウトのおっさん達が驚きのあまり、声を漏らす。

俺はマウンドをゆっくりと降り、馬原を睨む。


「見せてもらおうか」


点差は9ー0。

もう俺らの勝ち確。

俺はネクストサークルから見つめる。


────────────────────


「すいません、マーさん」

「気にすんな、俺が黙らせる」

「神室ぉ、怪物だな、てめぇはよぉ」


ボールを受け取った馬原は皇成を睨む。


「なら、俺たちだけが見える世界で勝負しようや」


投球練習の一球目、馬原は振りかぶり、ニヤつく。


「まずは俺の才能を知りな、ルーキー」


完璧な体重移動。

スカウトの一人が息を呑む。

ーーこの二人、格がちげぇな


「162km/h」

「おもしれぇ、最高じゃねぇか。」

「ドラ1だな、馬原浩太」

「神室、感謝すんぜ、俺のポテンシャルを更に開花させてくれたんだからな。」


過去最速を記録したストレート。

馬原は皇成に笑顔を向ける。


────────────────────


「そう来なきゃな。

認めてやるよ、馬原。

てめぇは超ド級のモンスターだ。」


いいねぇ!

これだよ、これ!

これが俺が求める才能と才能の勝負だよ!


「ッシャーァァァァ!」


馬原の雄叫びが響き渡る。

俺は心を滾らせながら打席へ向かう。


「打席で見ると更に速い。

いいねぇ、まるで大谷とやってるみたいでアガるわ。」

「だぁ!クソ!当んねぇ!」


踏み込んでギータのようにフルスイングしたが俺は尻餅を突いた。

ーーたまんねぇな、おい。


「最高の男だな、アンタ。」


二球連続ど真ん中のストレート。

俺は踏み込む。


「ここに来てよかったよ、俺」


再び空振り、尻餅を突き、ツーストライクに追い込まれたが俺は馬原先輩に笑顔を向ける。


「俺もお前に出会えてよかった。

ほら、早く立て、皇成。

最高だよ、お前」

「はい!浩太先輩!」


俺は立ち上がり、構える。


「ナイスボール」

「ナイススイング」


本当に楽しい勝負だった。

こんな嬉しい三振はない。

ーーアンタもKINGだな、先輩


「龍空、やべぇ、楽しい」

「あぁ、お前のツラ見てりゃわかる。」

「お前も楽しんで来い」

「オーケー」


俺は龍空とすれ違い様に話す。


「よかったね」

「あぁ、あの人は最高の投手だ。」

「倒さないとね」

「当然だ」


柚葉と話す俺は次の目標を口にする。

そして、この試合は俺たちがコールドで勝った。

ちなみに俺たちは浩太先輩から一本もヒットを打てなかった。

ったく世界は広いぜ。


────────────────────



「マー、今日活躍した一年は全員、一軍のレギュラーにする。

取るぞ、甲子園」

「当然でしょ」

「滾んなぁ」

「はい」


監督の相良と話す浩太はキーになるのは皇成だと確信する。

ーー俺とアイツがいりゃ、甲子園とか楽に取れるな。

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KOUSEI @kei06

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