誰の子どもだっけ

【あなたの帰るべきところはここではありません。荷物だけ置いて出ていきなさい】


 おお、まじか。


 家に帰るなりリビングの机にそんな置き手紙があった。

 確認するまでもなくお母さんだな。


 俺はもうここの家の子ではないのか。

 荷物だけは置いて行けって、追い剥ぎか。


 俺は言われたとおりに家を出た。



◆◇◆◇◆◇



 白石家のイヤホンを押す。


「こんばんわ、優良です」


 ガチャ


「お帰り、ゆうくん」


 出迎え早。

 インターホン越しじゃなくて直接言ってくれるあたりポイント高いです、愛莉さん。


「ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ、た、し?」


 おー、久しぶりに聞いた。現実で聞いたのは初めてだが。


「ご飯をいただきます」


「わたしー?もう、準備するから待っててね」


 え、強制じゃん。


「冗談だよ。ご飯食べよ?」


「あ、うん」


 結構本気で信じてしまった。



◆◇◆◇◆◇



「ねえ、ゆうくん」


 隣で横になる愛莉がもぞもぞと動く。


「ん?」


 横を向けば、愛莉がこちらに身体を向けていた。


「沙織から告白された?」


「んー、されたと言えばされたかな?」


 俺も身体を向ける。


 どうなんだろう。あれは告白なのか。


「どっちなの?」


「好きだったって」


「……ふーん」


 反応薄いな。大して興味なかったのか?


「ゆうくんは、旅行中沙織のことどう思ってたの?」


 どうって言われてもな。


「普通に楽しかったな。でも、なんていうか好きとはならなかったよ」


 まあ、当たり前なんだが。

 愛莉のこと好きになる宣言したからな。それで、早川そんのこと好きになったらまずい。


「ふーん」


 反応薄いな。

 ま、ニヤニヤしてるの隠せてないけどな。


「明日、夏祭りだな」


「覚えてたんだ」


「さすがにな」


「楽しみにしててね」


 愛莉が笑顔で言う。


「おう」

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