昔も今も変わらずクズ野郎

 別に俺は不細工ってわけではない。イケメンってわけでもない。普通なはず。

 この顔で生まれて不満に思ったことなんて一度もなかった。

 でも、中学に上がってからは少しだけ、本当に少しだけそんな気持ちがあった。


 俺の隣に愛莉がいたから。


 中学に上がってからも愛莉とは一緒にいた。

 小学生のときと変わらない。


 でも、中学になったことで人間関係は変わる。

 知らない人が増える。


 そして、知らない男子全てが愛莉の容姿に目を奪われていく。

 だって愛莉は可愛かったから。昔から一緒にいる、俺でさえそう思うんだ。初対面のやつから見れば超絶美少女に見えるだろう。


『どうして、あんなパッとしないやつが愛莉の隣にいるんだ』

『釣り合ってない』

『早く離れろ』


 実際に言われたわけではない。だけど、俺に指す視線が雄弁に語っていた。

 俺は、次第にいたたまれなくなった。


 俺は、愛莉の隣にふさわしくないんだ。


 辛かった。愛莉の隣に立つことが。

 今までは、それだけで嬉しかったのに。

 だけど、今は辛い。好きな人の隣に立つことが。


 距離を置こうとはした。

 でも、それは何より愛莉が許さなかった。俺の傍にはいつも愛莉がいた。

 もう近づかないで、とはどうしても言えなかった。

 かと言って黙って距離を置こうとしても隣にいる。

 どうしようか必死に頭を動かした。


 そして、ひとつの答えにたどり着いた。


 忘れればいい。

 この気持ち初恋を捨てよう。


 俺と愛莉はただの幼なじみなんだ。



◇◆◇◆◇◆



「あー、思い出した思い出した。そんなことあったなー」


 俺は虚空を眺めて呟く。


「……いや、よく忘れられたなっ、おい!」


 自分自身に洗脳ってか?何やってんだよ、俺。いや、確かに限界だったけども。

 だとしても、こんなん渡したあとにそれはないだろ。アホだろ。


 俺はそっと視線を下ろす。

 そこには手紙が。


【愛莉へ


 ずっと前から好きでした。大人になったら結婚してください。


 小川優良より】


 覚えている。

 いや、思い出した。


 小学卒業と同時に渡したものだ。


『ありがとうっ!約束だよ……っ』


 アホだろ。

 今まで裏切ってたってことだぞ?

 クズ野郎だな。


 こんな、大切に持っててくれて。


「……謝んないとな」


 忘れてしまったこと。

 距離を置こうとしたこと。


 謝った上で……


「付き合うのか?」


 付き合うのか?

 洗脳が解けたけど、俺の中で愛莉は幼なじみのままだと思う。


 でも、全て思い出して、『愛莉のこと好きじゃない』とか言ってみろ。

 本当にクズ野郎じゃないか?


 いや、でも好きでもないのに愛莉と付き合うのもクズ……なのか?

 それこそ釣り合ってない気がする。


 やべ、どうすんのが正しいんだろうか。


 どっちの選択肢を選んだとしても、クズ。


 なら、逃げよう。


 見なかったことにしよう。


 俺は、後片付けをしようと立ち上がる。


「……ゆうくん、その手紙」


 足が止まり、全身が強ばる。

 扉の方を向けば、そこには俺の右手にある手紙に目を向ける愛莉がいた。


 あ、逃げれない。







―――――――――――――――――――――

また投稿途切れてすみません!

それで、思ったんですがたぶん、毎日投稿無理です!ごめんなさい!

これからは、できれば毎日投稿しますが、1日空いても許してください。

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