記憶飛んだの薬の副作用では?

 やりやがった……っ!

 監禁だあ!

 付き合ってないのに!


「あっ!だいたい俺の両親に許可取ったのか?!」


「ゆうくんがお菓子持ってきてくれたでしょ?そこに優子さんが手紙でゆうくんを預かってだって」


 言いそう!お母さんなら言いそう!

 見ず知らずのはずのひかりに息子を預ける親だからな。

 仲良い愛莉になら嬉々として預けそう。


「……俺はまだ良いとは言ってないよな?」


「ヤンデレってそういうものでしょ?」


「……そうだな」


 くそぉ。誰だよ。愛莉をヤンデレにしたのは。

 俺だ。


「でも、監禁とは言っても縛りつけたりはしないよ?ただのお泊まり会だと思ってていいよ」


 そうだな。

 どうせ、帰ってもお母さんに追い返されそうだからもうここに住もう。


「それで、ご飯ができたらしいんだけどどうする?」


 窓の外を見れば空はすっかりと暗くなっていた。

 だいぶ寝てたんだな。


「食べるよ」



◇◆◇◆◇◆



「わあー、ゆうくんじゃない!久しぶりね!」


 白石家のリビングには愛莉のお母さん―愛子さんとお父さん―大造さんが座っていた。

 愛子さんは笑顔で迎えてくれる。

 大造さんはいつも通りじっと俺の顔を見つめてくる。

 言っては悪いけど、ちょっと怖い。外見がな。

 初対面のときは泣いて困らせたんだよな。


「お久しぶりです、愛子さん、大造さん。お世話になります」


「さあ、座って座って!いろいろ話したいから!」


 椅子を引いて手招きする愛子さん。

 俺は歩み寄って椅子に腰を下ろす。

 その隣に愛莉が座った。


 目の前にはまだ一言も発していない大造さんが座っていた。

 未だに俺の顔を見つめていらっしゃる。


 気まずい。


「……大きくなったな」


 低い声を震わせる大造さん。


「そうですね。最後に来たのは小学6年生の頃ですからね」


 中学になってからは男女というのを意識し始めたから。お泊まりはしなくなったな。


「……それで、いつ結婚するんだ?」


 へ?

 真面目な顔で何をおっしゃっているのですか?


「ちょ、ちょっとパパ!」


 愛莉が慌てて声をあげる。


「……あ、あの俺と愛莉は付き合っていませんよ?」


「……ん?」


 目を細くさせる大造さん。自然と増す威圧感。

 あの、怖いです。泣きますよ?


「……愛莉のことはもう好きじゃないのか?」


「へ?」


 もう好きじゃないって、まるで俺が好きだったみたいに。


「まあ、昔のことだものね。あ、愛莉あれを見せたら?」


「ううん、あれはいいの。思い出してほしいから」


 え、本当に何なの?

 俺ってガチで愛莉のこと好きだったのか?

 愛莉はそれを知っているのか?

 もしかして俺って記憶喪失?


「……残念だ。優良くんなら愛莉を任せられると思っていたのに」


 少し小さくなる大造さん。

 ええ、俺はそこまでの人間じゃないんだけどなあ。


「まあまあ、今はご飯を食べましょう」


 愛子さんが手を鳴らして言った。

 俺はモヤモヤしながらもご飯に手をつけた。


 


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