2回戦

「はあー」


 俺はベッド上で身体を伸ばす。


「やっぱり、ベッドの上は落ち着……かねえ!!」


 ピンク色のカーテン。ピンク色の布団。ピンク色の枕。

 そして、俺の鼻腔をくすぐる甘い匂い。


 気づいた方も多いであろう。

 ここは俺の部屋ではない。愛莉の部屋だ。

 何故、こんなことになったのか。



◆◇◆◇◆◇



「優良」


「なに?」


 朝食を食べていると、お母さんに声をかけられる。


「あなた、一応愛莉ちゃんに助けられたんだからお礼言って来なさい」


 んー、確かに助けられたとも言えるな。


「わかったよ」


 俺は立ち上がり、家を出ようと歩く。


「あ、待って。これ持って行きなさい」


 お母さんがそう言って手渡して来たのはひとつの紙袋だった。

 中にはお菓子が入っていた。

 渡せってことね。


「おっけー。じゃ、行ってくる」


 家を出て、歩く。

 そして5分も経たずに着いた。


 インターホンを押す。


「ゆうくん!入って入って!」


 はやっ。

 押してから一秒も経たずに扉が開き、愛莉が出てきた。

 愛莉は俺の手を引き、自分の部屋へと連れていく。

 そして、無理やりピンク色のベッドに座らされる。


「お茶持ってくるね!」


「あ、待って。これお母さんから貰ったんだ。皆で食べて」


 部屋から出ようとする愛莉に紙袋を渡した。


「ありがとう!」


 愛莉はあわただしく出ていった。


 はあ、それにしても愛莉の部屋か。

 中学に入って少ししたぐらいから全然来てなかったな。久しぶりだな。あんまり変わってないな。

 首を回して、愛莉の部屋を見ていると愛莉が入ってくる。


「はい、お茶だよ」


「ありがとう」


 お茶を受けとる。

 愛莉は俺の隣に腰をおろした。


「近くね?」


 肩が触れあっているんだが。


「そう?」


 愛莉が首をかしげる。

 肩が触れあっているんだが。

 ……まあ、いっか。


「あー、その、連れ戻してくれてありがとうな」


 俺は照れ臭くて顔を少し背けて告げる。


「うんっ」


 愛莉は笑顔で頷いた。


「じゃ、俺はもう帰るよ」


 密室で男女ふたりは少し危ないだろう。


「待って!」


 立ち上がった俺の手を愛莉がひっぱる。


「うわっ」

「きゃっ」


 バランスを崩した俺は愛莉をベッドに押し倒してしまう。

 あと少し動かせば当たる距離に愛莉の顔がある。

 身体は密着しあっていて、ドクドクと熱い血が走る。


「……んっ」


 愛莉が目を閉じる。


 ……は?ちよ、ちょっと待てよ!


「ご、ごめん!押し倒して!悪気はなかったんだ!」


 俺は勢いよく立ち上がる。


「いいよいいよ!」


 愛莉は身体を起こしベッドに座る。


「……へたれ」


 愛莉が小声で何かを呟いた気がするが、聞こえない。本当に聞こえない。


「じゃ、じゃあもう帰るから!」


 俺は足早に帰ろうと足を……


「あ、あれ……?」


 視界が揺れる。まぶたがゆっくりと閉じて行き……

 つか、同じようなこと最近あったよな?



◇◆◇◆◇◆



 そして、今に至る。


「ゆうくん、具合はどう?」


 部屋に愛莉が入ってくる。 


「あ!お前、一服持ったな!」


「そうだよ。今日から、監禁するから」


 またですか?

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