侍従関係じゃなくて
忍と出会ったのは、5歳の頃でした。
両親は仕事でなかなか家に帰ってきません。当時の私はそれに対して、よく泣いていたらしいです。そこで、お父様と昔からの友人の一人娘である忍が私の遊び相手に選ばれたのです。
「……よろしく、忍」
「うん!よろしくひかり!」
昔の忍は表情豊かで、私をいつも振り回すとても元気な子でした。
小学生になってからはヒーローでした。
いつも、私に暴言を吐いてくる男の子から守ってくれました。
でも、忍はだんだんとそっけなくなっていきました。
中学に上がってからは、私のことを「ひかり様」と呼ぶように。
態度も、私から一歩引いて見守るような感じに変わっていました。
中学2年生になる頃には「お嬢様」と呼ばれるようになり、私は自信を持って忍を友達とは呼べなくなっていました。
◆◇◆◇◆◇
忍どこに行ったの!
『友達なんだろ?』
優良さんの言葉を聞いて思い出しました。
私と忍は友達です。
どこですれ違ったのかはわかりません。だけど、このまま終わりたくないです!
「いた……っ!」
別荘から離れた砂浜に忍は立っていました。
「忍……っ!」
私は忍の名前を大きく叫びます。
声が届いたのか忍の肩がびくっと上がる。
「……おじょ……っ」
忍はこちらを振り向かず走り出そうとする。
「待って!話したいの!このまま別れ……」
違いますね。出ていってと告げたのは私です。
「こめんなさい!理由も聞かずに怒ってしまって!ごめんなさい!忍のこと信じきれなくて!」
みっともなくただ叫びます。何故だか瞳から涙が溢れてきます。
「……お嬢様、はしたないですよ?でも、私もです」
目の前には涙を流しながら笑う忍が。
◇◆◇◆◇◆
「お嬢様は、普通の女の子として見てくださる優良様を好きになったのですよね?」
砂浜に肩が触れあう距離で座る私と忍。
私は忍が出してくれたガーディガンを羽織っています。
「そうよ」
「ですが、お嬢様が先ほどまでしていた監禁はお嬢様のお父様の手を借りてなさったもの。それはお嬢様の言う『普通の女の子』ではないのでは?」
「っ!」
私は忍の言葉に目が覚めました。
「ですから、勝手ながら愛莉様に居場所を教えました。すみません」
忍が深々と頭を下げる。
「……謝らないで。むしろ謝るのは私よ。責めてしまってごめんなさい。それから、私のことを助けてくれてありがとう」
今度は私が忍に頭を下げます。
「やめてください。侍女として当然のことをしただけなので」
「……『お嬢様』、敬語やめてよ」
「え……?」
忍が目を丸くさせる。
「もう、侍女とか嫌だ。私は忍と友達でいたい」
「わかり……分かったよ、ひかり。実は私も寂しかった。ひかりはお嬢様だと知って、ひかりの隣に立つ人としてふさわしい人になろうとしてた。でも、もうやめるね」
「うん!これからも一緒にいてね」
私と忍はふたり笑い合いました。
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